ハンス・クナッパーツブッシュ

交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
 バイエルン国立管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(54)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(60)
 北ドイツ放送交響楽団
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(55)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(64)

交響曲第5番変ロ長調 ハンス・クナッパーツブッシュ
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第7番ホ長調
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ケルン放送交響楽団

交響曲第8番ハ短調
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 バイエルン国立管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(63/01/24)
 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(63/01 スタジオ)

交響曲第9番ニ短調
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 バイエルン国立管弦楽団

 フルトヴェングラー同様、クナッパーツブッシュもつまらない先入観(偏見)のために聴くのが遅れた指揮者である。他所でも触れていると思うが、かつてCDジャーナルに連載されていた「徹底聴きまくりシリーズ」のブル9の回で、平林直哉がクナ盤について「改訂版によるティンパニがまとわりつくハエのように煩わしい」というコメントを付けていた。(後に入手した9番BPO盤の解説でも、彼は「便所の落書きのような低次元の印象」と述べている。勿論、これらはあくまで9番の改訂に限っての見解であり、私もそれに同意することに吝かではない。)他でもクナッパーツブッシュが弟子達によってボロボロにされた改訂版を好んで使っていたという既述を目にしていたから、私はこの指揮者のブルックナーはそれこそ蝿がたかって蛆が湧いているような気色の悪い演奏に違いないと恐れおののいていたのだ。もちろん聴いてみようなどとは一瞬でも思わなかった。そんな状態で何年もが過ぎた。
 という訳で、クナのブルックナーを最初に聴いたのはようやく今世紀に入ってからである。学会の講演会(年二回開催で春は関東、秋は地方持ち回り)に参加するため関東に出張した際に、東京都内の中古屋巡りをしていて8番MPOスタジオ録音盤(ワーグナーの管弦楽曲が併録)を買ったと記憶している。(たしか渋谷のレコファンにて2400円だった。)ブルックナーのCD蒐集が進むにつれ、様々な演奏スタイルに触れることになるので、こちらの趣向にも当然ながら幅が出てくる。ちょっとぐらいヘンな演奏も聴いてみたいな、と思ったのが購入の動機である。(既にインバルとティントナーによる初稿演奏も経験済みだった。)帰宅後、少々ワクワク&ハラハラしながら聴いたが、意外とまともな演奏で拍子抜けした。というより、所々で耳慣れぬオーケストレーションが聞こえてくるものの、演奏自体はたいそう立派なもので堪能&感心した。妙に思った箇所も繰り返し聞くうちに慣れ、それなりの良さがあると思えるようになった。その後買った5番VPOスタジオ盤(1000円廉価盤)も大幅カットやドンチャン騒ぎに最初こそ驚いたが、やはり同じ経過を辿った。こちらは8番改訂版にはない面白さも感じられた。
 上のリストを眺めて今更のごとく思ったのだが、それ以後私が買ったのは大部分が中古盤である。ネットオークション、楽天フリマ、アマゾン・マーケットプレイスにて、いずれも大した出費なしに入手できた。例外の1つは悪名高き9番の改訂(改竄)がどんなに酷いのか実際に聴いてみようと思い立ってhmv.co.jpに注文した9番バイエルン国立管盤(LIVING STAGE)である。(明らかに「ゲテモノ趣味」の、つまりまともな演奏ではもはや満足できない体質になる兆しが顕れている。私と同じ道を辿ってはいけない。)もう1つは、8&9番BPO盤(KING=Tahra)であるが、廃盤CDディスカウントフェアで買ったので定価の3割(7割引)だった。要は、クナのブルックナーはほぼ全部が単に安かったから手を出したものであり(新品を購入した場合でもそんなに高くはなかった)、是が非でも聴きたいという理由はなく(音が悪いのは判り切っていたし)、何とはなしに(つまり惰性で)増えてしまったということである。今月(2004年12月)はフルヴェンとクナというモノラル時代の大巨匠のページを執筆するのであるが、2人分を合計すると23種にも上る。(こんなはずではなかった。何せサイトを立ち上げた今年4月にはクナ盤は半分の8種類だったのだから。)来年1月に首尾良くアップできるかどうかは、年末&正月休みにどれだけ集中して取り組めるかにかかっている。
 なお、上記以外に未入手の音源が存在することも承知しているが、このうち4番はVPO64年盤、8番は61年VPO盤と63年MPO盤(ただしライヴの方)が名演らしいので機会があれば聴いてみたい。とはいえ、既所有品と同じく安価な中古品でも見つけない限り手を出さないと思う。(3種とも現在は入手困難らしく、ネットオークションでもそこそこ高騰する。)今後AltusやTESTAMENTレーベルから音質向上の図られた復刻盤が発売されれば、あるいは考えるかもしれないが・・・・(追記:2004年12月に8番63年ライヴのDISQUE REFRAIN盤、2005年5月に4番64年ライヴの NUEVO ERA盤をともにヤフオクでゲットした。さらに同月、楽天フリマにて8番VPOを購入、これで出回っているクナのブル音源は全て揃ったはずである。正直なところ、当ページ執筆開始時にはこうなるとは思っていなかった。フルトヴェングラーやシューリヒト、クレンペラーなどでも同じことをしようとは考えていない。)

 ちなみに、私が所有しているこの指揮者のブルックナー以外のディスクは僅か4枚(ベートーヴェン3番他、ハイドン88番+ベートーヴェン5番、ベートーヴェン8番+ブラームス2番、そしてブラームス3番+ハイドン94番)であるが、何か変なことをしなければ気が済まないのか、どれも非常にグロテスクな、さもなくば人を食ったような演奏になっている。(断っておくが、今やすっかり「悪食」が板に付いた私は、こういうのも大好きである。)許光俊は「生きていくためのクラシック」にて、この指揮者についても見事な評論を書いているが、その中の「不思議な魔力がある」には全く同感である。一方、ブルックナーは版の選択こそ「変態」だが、演奏は上述したように「まとも」なのがちょっと不可解である。が、その分だけ「魔力」は少なくなっているように思う。そんなもんブルックナーには必要ないわい、と指揮者は考えていたのかもしれない。

おまけ(言い訳)
 実はクナのディスク評ページの執筆は非常に気が重い。この国には(当サイトと違って)量だけでなく質にも優れたクラシック関係のウェブサイトが多数存在するが、それらの中でもS氏による総合サイトは真っ先に挙げられるべきものだと私は思っている。特にクナッパーツブッシュのコンテンツの充実ぶりには感嘆するより他はない。(テンシュテットもクレンペラーも凄いが・・・・)氏は私のように「1演奏につきディスク1枚で十分」とは考えず、同一演奏でも違うレーベルから発売されれば入手し、そのつど感想を自身のサイトに載せている。おそらく入手可能なクナの音源は全て集めるという方針をお持ちのようである。ブルックナーのディスクに対する評価は、従前より「Hans Knappertsbusch New CD」というコーナーで閲覧可能であったが、ロングラン・シリーズの「クナを聞く」にて(第102回目からの「ブルックナー編」で)新たなブルックナーの試聴比較が始まった。私も非常に楽しみにしている。まず同一演奏を異なるレーベル間で聴き比べて「リファレンス盤」を決め、それから同曲異演奏の比較に移るという徹底ぶりである。おそらく、わが国では誰にも真似はできまい。あのような偉大なサイトと比べれば、私のディスク評ページなどいくら字数を費やしたところで所詮は将棋の駒、いやそれ以下の吹かずとも勝手に飛んでいくゴミ同然である。こんな風に考えたら気が進まないのも当然だ。(作成前に「内容空疎」という批判に対する予防線を張っているのがミエミエである。)

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