交響曲第8番ハ短調
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮バイエルン国立管弦楽団
55/12/05
ORFEO C 577 021 B

 当サイトにたびたび登場していただいているS氏は、この55年盤について「クナの演奏したものかどうか、まだ確信が持てないでいる」そうだ。おそらく私の100倍以上もクナを聴いているであろう氏がそうなのだから、私が真偽について述べる資格は本来ないのだろう。が、弦が執拗に刻む音が妙に気味悪く感じるのはクナの他盤と共通していると思ったし、第1楽章終盤のカタストロフなどで聞かれる金管の荒々しさ(粗々しさ?)もいかにもクナっぽい。ので、これも彼の真正演奏であると私は考えている。
 89番BPO盤(Tahra)の日本語解説を執筆した平林直哉は、クナが残した5種類の8番録音のうち、当盤収録の演奏については「最も投げ遣りな演奏。金管楽器のバランスも悪く、アンサンブルもあちこちで乱れている。これを初めて聴いた人はクナに対しての印象をずいぶんと悪くするに違いない」コメントしていた。私は「投げ遣り」とまでは思わなかったが、トータル70分14秒というシューリヒトばりのスタスタ演奏には呆気にとられる以外なかった。あるいはシューリヒトによる・・・・(「もうええ」という声が聞こえてきそうなので以下略。)
 BPO盤を誉めた文章をひっくり返せば、そのまま当盤の気に食わない点について触れたものになる。つまり、アダージョがアダージョに聞こえないようなテンポでは感興に浸る暇がないということである。4つの楽章のバランスからいっても、第3楽章のテンポ設定は最悪と言いたいほどである。以上。(クナのディスク評らしく、このページは投げ遣りで終わることにした。)

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