交響曲第7番ホ長調
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ケルン放送交響楽団
63/05/10
LIVING STAGE LS 1015

 アダージョについて「歌うところは歌い、嘆くところは嘆いている」と書いた49年VPO盤だが、クライマックスは意外とアッサリしており、トラックタイムも20分を切っている。遅まきながら全楽章とも快速テンポであることに気が付いたという情けなさである。快速だが淡々ではなく激しい。燃え上がる火の玉のようなスタイルである。これに対して当盤は前半2楽章はともに20分ちょっとで49年盤と大差ないが、後半楽章がかなり遅くなっている。実はそれが気になっていたので当盤を入手(ネットオークションで無競走落札)する気になったのである。
 当盤は3番MPO盤と同じく晩年様式、つまり「スケール感はタップリで、アンサンブルはそれなりに」という演奏である。VPO盤のような脂ぎった所はない。かといって、衰えのためにヨレヨレになっているということもない。ところがテープは少々ヨレヨレで所々で欠落が耳に付き、49年盤よりヒスも多く音質は明らかに劣る。ここでは旧盤ページで触れた第1楽章のハ長調部分の畳みかけ(4分40秒〜5分20秒)を比較してみよう。当盤では同じ部分が4分40秒〜5分30秒となっている。つまり4/3倍の時間をかけているのだが、リタルダンドのかけ方がより自然で、スケールは倍以上も大きくなった感がある。スケールといえば、腰をじっくり落としたこの楽章の終わりは圧倒的である。18分54秒からの「ミソミド、ミソミド、ミソミド、ミソミド」の繰り返しはちょっとギクシャクしているが、乱れと感じさせるほどではないため、結構いい味を出している。そして、金管の咆哮による「ミーソードーレーミー」(19分05秒〜)からはさらにテンポを落とす。何と巨大な表現! ただし、コーダで唐突に遅いテンポを設定するという無茶苦茶なやり方でなく、基本テンポから少しずつ段階的に遅くするのが肝要である。そうするとダレない。指揮者はそのことをちゃんと解っている。ティンパニの「ドン」による締めは百点満点だ。
 第2楽章は枯れている。録音のせいでそう聞こえるのではない。これは本当に枯れている。これに匹敵するのはワルター盤ぐらいか。11分30秒からの長調部分は余計な力が完全に抜け、自然体そのものという感じだ。こういう境地に達していたのなら、無理な注文と承知しつつもワルターと同じくハース版でやって欲しかった。クライマックス直前も速めのテンポで淡々と進むのに、打楽器炸裂による騒々しさは完全に場違いという気がする。そこにだけ異物が混入しているようで非常に残念だ。
 既に述べたように続く34楽章のテンポは遅い。それぞれ12分台、14分台後半というのはチェリビダッケ級ではないか? (そういえば3番64年MPO盤のトラックタイムもチェリ並だった。また、この曲の後半が遅いというのは、やはり最晩年の録音であるワルター盤と共通している。)が、遅いにもかかわらず第1楽章のコーダと同じく全くダレないのである。淡々と、飄々とやっているのが良いというだけでなく、テンポ設定が絶妙なためであろう。3番MPO盤ページでも引いたS氏の言葉、「どこまでも終わらないで欲しい」が思い出される。特にこの指揮者のファンではないにもかかわらず、私もそう思ってしまった。こういう場合にはいつもこれで逃げを打ってしまうのだが、やはり指揮者の至芸としか考えられない。ということで、この演奏を最新録音で聞いたら・・・・かなり上位にランクさせるはずだ。間違いない。少なくともチェリの正規盤よりは上に置く。

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