交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
55/04
KING Record (LONDON) KICC-9367〜8

 4番改訂版については既にマタチッチのページにいろいろ書いてしまったので、ここでは述べることがあまりない。クナのスタジオ録音の常だが、この演奏も意外におとなしいと聞こえる。音質のせいもあるだろう。改訂版のハチャメチャぶりに笑い転げたいのであれば、やはり録音も良いマタチッチ盤であろう。
 当盤で興味を覚えたのは第3楽章である。ちっとも激しくない。ティンパニが入ってきても抑制が利いている。スケルツォ特有の躍動感もあまり感じられない。特筆すべきはトリオ直前(4分半頃)の「ドタバタ喜劇」のような部分を淡々と流しているかのように演奏していることである。再現部のカット直前(6分半頃)の処理も同様で、あくまで冷静さを保っている。フルトヴェングラーはこれらのドタバタも全く手加減しなかったし、マタチッチも凄まじい勢いで突進していた。彼らと比較すれば、クナのスタイルは手抜き演奏、無気力演奏と聞こえてしまう。ここで「クラシックCD名盤バトル」のブラームスの交響曲第1番の項で許光俊が書いていたことを思い出した。
 彼は以前より「ブラ1は駄作である」という持論を展開していたが、その本では(ダサい)この曲の演奏スタイルとして「1.ダサさに気づかず熱中演奏」「2.ダサさに気づいても、見ぬふりして自分流にスマートに演奏してしまう」「3.ダサさに気づいても、偉い人が書いた曲だからと受け入れる」「4.ダサい曲だから、ダサく演奏する」という4種を紹介していた。(さらに最初のやり方以外は全てダメであるとして、1型によるトスカニーニ盤を推していた。)さて、当盤のクナのやり方はどれに該当するのだろうか、としばらく考えたが、ピタリと当てはまるものはないような気がしてきた。クナは常々この曲をつまらないと思っていたので、このスタジオ録音に臨んでも「つまらない曲を真剣にやってもしょうがないじゃん」とばかり、やる気のない演奏に終始した。それだけのことである。(こんなこと書いたら許以上に非難されるだろーな。)これに対して、先述したフルヴェンやマタチッチ盤は許に従えば第1型の「熱中演奏」に分類されると思う。ついでに書くと、「つまらない曲だから何とかして盛り上げなければ」という実に素朴な心意気にて必死に演奏したのが宇野盤である。だが、こういったスタイルでは、どうしたって「ドタバタ」でダサくなってしまうのは避けられない。(吉本新喜劇のように笑いを取りたいならいいが。)逆にクナの低徊趣味的な演奏が、ある意味(ただし意味不明)見識あるやり方ではないかとすら思えてくる。

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