交響曲第7番ホ長調
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
49/08/30
Archipel ARCD 0046

 さて、フルトヴェングラー盤では特に書くことが浮かばず、7番はいい音で聴いてこそナンボの曲であるとつくづく思った。(改訂版使用とはいっても、ノヴァーク版と明らかに違うのは「フライング・ホルン」ぐらいだし。)ところが、当盤を改めて聴いて出だしから圧倒された。ゆったりとしたテンポで開始される第1楽章(「フライング・ホルン」の前まで)の響きの深さはどうだろう。16分49秒からの低弦の重厚な響きも比類がない。(チェロのもの悲しい旋律をコントラバスが支えているのが聴き取れる。それともブラスの通奏低音か?)テープの保存状態が極めて良好だったようで、ノイズや歪みが全くないわけではないものの、当盤にはモノラルという以外にこれといった不満はない。49年の録音としては驚異的な高音質であるが、その貢献には多大なものがあると思う。(このライヴは数多くのレーベルからリリースされているようだが、どれも音質は良好らしい。)4分40秒からのインテンポによる畳みかけも素晴らしい。曲想変わり目(5分20秒)の直前でリタルダンドをかけるのでヴァントのスタイルとはやや違うが、迫力では負けていない。コーダで走らないのも見事。19分15秒からの「ミーソードーレー」に力を込めるのも効果抜群である。
 細部の指摘を続けていたらエンドレスなのでこれ位にするが、他の箇所もインテンポには特にこだわっていないようである。第2楽章も小刻みにテンポを変え、歌うところは歌い、嘆くところは嘆いている。こういった揺さぶり攻撃は本来私は大嫌いなのだが、当盤ではそれほど耳障りにはならない。どういう訳かは知らないが最新録音とは少々事情が異なるようである。もしかすると、モノラル録音では情報量不足に陥りがちのため、耳が、脳がある程度の刺激を欲しがるからかもしれない。もしもこの演奏が最新デジタル録音で残されていたならば、私はきっとトップクラスの評価をしていただろう、と最初は思った。が、あるいは「究極の勘違い演奏」となっていた可能性も否定できない。やっぱ難しいわ、ヒストリカル録音の評価は。
 遅ればせながら、であるが、当盤は1949年ザルツブルク音楽祭での演奏である。ちなみに、吉田秀和はこの5年後(54年7月)の同音楽祭にて同じコンビによる同曲を聴いたらしいが、「私はわからなかった」という率直な感想を「世界の指揮者」(新潮文庫)に記している。何でもアダージョの途中で眠ってしまった彼は、目が覚めてもまだ荘重な音楽が鳴っているのに恐れ入り、続くスケルツォでも単純な反復に閉口したということだ。「あの大指揮者をもってしてもわからなかった。バカである。」私は彼のこういう潔さが大好きだ。残念ながらこの演奏会の録音は残っていないらしく、CDが発売されたという話も聞かない。私が聴いても寝てしまうか確かめてみたいのだが・・・・

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