ベルナルト・ハイティンク

交響曲第0番ニ短調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

交響曲第1番ハ短調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

交響曲第2番ハ短調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第5番変ロ長調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第6番イ長調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 バイエルン放送交響楽団
 シュターツカペレ・ドレスデン

交響曲第7番ホ長調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(66)
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(78)
 シカゴ交響楽団

交響曲第8番ハ短調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(69)
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(81)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

交響曲第9番ニ短調
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(65)
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(81)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 既にあちこちで書いているはずだが、私が86年に初めて買ったCDがハイティンク&ウィーン・フィルの「ロマンティック」だった。予想していたのとは異なる遅めのテンポだったが、おおらかな演奏はとても気に入った。彼が同オケとブルックナーの全集録音を行うというので、他の曲もこのコンビで買い揃えるつもりだった。ところが、いつまで待っても次が出ない。(ようやくにしてチクルス第2弾となる5番がリリースされたのは4番発売から3年も経った89年で、後述するように私はもう日本にはいなかった。)そうこうしているうちに、当時定期購読していたFM-fun誌のクラシック特集(「初心者がとりあえず聴くべき100枚」といった主旨の特集だったと思う)で紹介されていたコンセルトヘボウ管との9番を買った。これはマジに凄い音楽だと思った。そう思えたのは演奏が優れていたからに他ならない。そこで、音楽之友社のクラシックCDカタログで「特薦」扱いされていた8番も買った。(当時のカタログでは短評とともに「特薦」「推薦」「無印」という三段階の評価が付けられていたが、私はそれを無条件に信じていた。今思うと恥ずかしい。そういえば100点満点による録音評もあったが、そちらは思い返してみても概ね妥当な評価だったと思う。)演奏自体はいいと思ったが、4番や9番ほどは感動できなかった。(この大作が真に名曲と思えるようになったのは、10年以上も後にヴァント93年盤を聴いてからのことである。)
 それはともかく、当時の私はハイティンクに対し「カラヤンやバーンスタインといったスター指揮者よりも地味だが、実力では全く負けていない」という印象を持った。時にNHK-FMから流れるベートーヴェンやマーラーの新録音を聴くにつれ、それは次第に確固たるものとなった。(後にスペイン語の訓練を一緒に受けていた人から、「ハイティンクのCDを買っときゃ間違いない」と言われ、私の評価が決して間違いではなかったと思った。ちなみに現在マーラーは持っていないが、ベートーヴェンの35679番は所有している。どれも非常に完成度が高い。)が、当時出ていたハイティンクのブルックナーはそれらが全てであったため、7356番は別の指揮者のディスクを買うことになった。後に7番は78年盤がCD化されたものの、アナログ録音なのであまり購入意欲が湧かなかったし、何よりその頃はまだ「1曲1枚」の原則をしっかり守っていた。その後私はしばらく国外に在住することとなり、帰国後しばらくはクラシック自体をそんなに聴かなくなっていたので、発売されていた538番にも全く関心を持たなかった。全集録音はそこまでで中止、どころか、ハイティンクはPHILIPSとの契約自体を打ち切られてしまった。それにしても、並行していたマーラーとベートーヴェンの全集録音は順調に進み、後者に至ってはスンナリと(わずか2年余りで)完成に漕ぎつけてしまったというのに、ブルックナーだけあんなにモタモタしたのは何故なのだろう、と今考えても不思議でならない。(第3弾の3番は5番の翌年に出たが、次の、そして最後になってしまった8番がリリースされたのは3番発売後何と6年以上も経ってからである。全集企画では通常「あり得ない」スパンである。)ブルックナーの録音をコンセルトヘボウあるいはベルリン・フィルと進めていたらひょっとして完成できたかもしれない、と考えたらまさに痛恨の極みである。(勝手な憶測で痛がってても何にもならないのは解っちゃいるけれど。)
 以上、いつもながらウダウダ書いてきたが、新譜がほとんど出なくなっても(海賊盤CD-Rは売ってるが)演奏会は海外国内を問わずことごとく絶賛されているようであり、「地味だが実力はある」というハイティンクに対する私の評価は変わっていない。彼のメジャー・レーベルへの復帰(ま、マイナーでも良しとするか)、およびブルックナーの再録音を心待ちにしている今日この頃である。80歳を過ぎて開始したらヴァント以来の特選連発になるんじゃないか。と、これまた独り勝手に思っている。

戻る