交響曲第6番イ長調
ベルナルト・ハイティンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン
03/11/02
Profil PH 07011

 第1楽章の序奏が85年バイエルン放送響盤よりが温和しめ、というより神経質と聞こえる。真面目にやればやるほどつまらなくなってしまう曲だけに、ハイティンクの性格が災いしているのではないか、との危惧を抱いた。が杞憂だった。0分49秒以降の爆発的ともいえる表現の大きさにビックラこいた。「第1主題のフォルティッシモの提示はものすごい巨大さだ。こんな巨大さは以前のヴァントには絶対になかった。」これは宇野功芳のヴァント&NDR95年新盤の解説中にあるコメントだが、指揮者名を変えればそっくりそのまま通用する。いや、オケのパワーをも考慮に入れればスケール感は断然上回っているではないか。金切り声みたいなブラスを筆頭に単にやかましいだけだったヨッフム時代から、シノーポリの指導によって徐々にドッシリ構えるように変貌していったSKDであるが、その充実した響きが今世紀に入っても維持されているのは嬉しい限りだ。8分16秒から一気に音量を上げ8分45秒の再現部を迎えるまでの劇的表現はショルティ盤にも匹敵する。(ティンパニがまともな分だけインパクトは小さいが。)コーダが、いやその少し前(13分15秒〜)から楽章を締め括るまではさらに圧倒された。「究極盤」と同じくテンポを大きく落として派手に「ジャン」で終わるのも私としては好ましい。中間楽章は飛ばす。
 フィナーレもせせこましく始めておいて徐々に劇性を加えていく。地味なこの曲をここまで盛り上げてくれたら言うことなしである。BRSO盤は時々暴れているなぁという印象しかなかったが、当盤ではストーリーを深く考えているようにも思える。「塔」通販の宣伝文にあった「凄演」は本当である。(ヴァントやシノーポリによる他のProfil新譜とのセットでの紹介ではあったが。)ただし難が全くない訳ではない。第1楽章に戻って、1分40秒の第2主題提示におけるアンサンブルはいかにも雑である。3分17秒から、あるいは再現部も同様で、速い部分の仕上がりがどうにもラフと聞こえてしまう。またテンポの切り替わる部分の接続がスムーズでないと感じられたことも何度かあった。これらが指揮者の統率力の低下ゆえだとしたら問題だ。今年(2007年)からシカゴ響の首席指揮者の座に就くハイティンクであるが、私としては今度こそブルックナー新全集を完成させてもらいたいと願うばかりである。ただし、ショルティ以上の強烈演奏を成し遂げられるか否かは、今後増していくであろう指揮者のカリスマ性が年齢による衰えのスピードを上回れるかどうかに懸かっているといえるだろう。

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