交響曲第6番イ長調
ベルナルト・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団
85/01/18
Lucky Ball LB-0034

 2003年の演奏であるSKDとのEn Larmes盤とほぼ同時期にYahoo! オークションに出品されていた。(18年の隔たりがあるだけに、03年盤の演奏時間は若干遅くなっているようである。)最新のハイティンクの演奏スタイルを知ることができるゆえ、どちらかといえばそちらの方が欲しかったのだが、残念ながら競り負けてしまい当盤だけを入手。出品価格1000円のままの無競争落札であった。8番VPO盤ページに書いていたが、これでようやくハイティンクの3番以降が揃った。(追記:Profilレーベルから発売されたSKD正規盤を2007年2月に購入した。)
 ネット通販サイトの評では「ハイティンクはライヴが良い」とあるが、これは何も彼に限ったことではない。しかし、安全運転に終止するなとど時に批判されることもある彼がライヴではどういった演奏をするのかは以前から気に懸かっていた。既に他盤のページに書いたが、ハイティンクの堅実なスタイルだと曲によっては退屈で面白味に欠けるという印象を受けてしまう。この6番は地味なだけに、そうなったら悲惨だ。しかし、第1楽章の序奏部分を聴いただけでその危惧はどこかへ飛んでいってしまった。トランペットがいかにも即興的という感じでノビノビと吹いている。主部に入っても同じ。出だしのティンパニ乱打はショルティと比べたら地味(←この曲に関しては大抵の指揮者がそう)だが、ハイティンクのスタジオ録音からは考えられないほど激しい。他のパートもみな勢いがある。特に1分12秒からの金管は少々前のめりで、弦の刻みと少々ずれているように聞こえなくもないが、そんなのお構いなしとばかりに自由自在に吹いている。 「やっぱライヴはこうでなくっちゃ」と思った。以後も荒々しくなる所が出てくるけれど、粗くはならない。(←使い回しだな、これ。)VPOとだったらここまで上手くいったかどうか?
 6番についてはあまり書くことがない。第4楽章3分53秒で、木管による「ピロピロピロピロピロピロピロピロ」が明瞭に聞き取れてハッとしたぐらいか。と思ったが、6分20秒で大きくテンポを落とす。ハイティンクの演奏でここまで極端なテンポの変更は他にあっただろうか?(インテンポに過ぎると、6番と自分の芸風がはまりすぎてつまらなくなると考えたのだろうか? まさか。)エンディングもあくまで節度を保って大音響にしないのがいかにも彼らしいところだが、ライヴ特有の勢いと激しさは不足していない。トータル54分という中庸な演奏時間であるがスケール感に不足はなく、何となくではあるがクレンペラーのフィルハーモニア盤と似ているようにも思った。他の曲でも彼のライヴ録音を聴いてみたくなった。
 最後に音質についてコメントすると、ミュンヘン・フィルほどではないがメタリックな感じ(会場がヘラクレス・ザールのせい?)で、ハイティンクのACOやVPOとの録音とはかなり印象が異なる。明るいオケの音色のお陰で窮屈に聞こえないのはプラスだが、どうやらエアチェック音源らしく、ヘッドフォンやそれなりの装置で聴く場合には高音を絞らないとやや耳障り(ラジカセでは音量を上げても気にならない)という程度のヒスノイズがある。

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