交響曲第7番ホ長調
ベルナルト・ハイティンク指揮シカゴ交響楽団
07/05/10〜12, 15
CSO RESOUND CSOR 901704(ダウンロード購入)

 ハイティンクによるブルックナーの新録音は無条件に「買い」の方針なので、「犬」通販にて当盤のリリース情報(2007年10月下旬発売予定)を得ると同時に予約注文を入れた。マルチバイ割引(25%)でも2500円超という価格設定は少々不満だったが・・・・(ちなみにSACD Hybrid盤だとマルチを利用しても3Kを上回ってしまう。ついでながら、通常盤のオンライン会員特価は税込¥3,015、一般価格は同¥3,350である。店頭では本当にそんな値段で売っているのだろうか?)ところが、既に(10月9日時点で)iTunes Store経由で手に入るとの投稿を某掲示板のブル7スレにて目にしたため早速飛んでみたら、確かにあった。それも半額以下の1200円で。もちろん即座に注文確定である。なお、今回はDigital Bookletというのも付いてきた。ダブルクリックするとPDFファイル(9ページ)が開き、印刷も可能である。ただし中身は英仏独語による曲目と指揮者紹介(あとは表紙と裏表紙など)、つまり別にあってもなくても構わないものだった。
 トータルタイム67分28秒は78年ACO盤より約2分長く、その分解釈も深くなっているのではないかと期待しつつ試聴を始めた。ところがである。第1楽章の出だしは旧盤よりもおとなしい。思わず「こんなのありかよー?」と叫びたくなってしまった。徐々に盛り上げてはくれるのだが、やっぱり地味である。4分45秒で曲調が変わると次第にノロくなる。ここでスタスタテンポを採る指揮者は全てダメの烙印を押す私ではあるが、かといって足を緩めるのもどうかと思う。それよりもズンズン着き進むところでの金管の鳴りがあまりに弱いことが気になった。何せ例の「最凶ブラスセクション」を擁しているのだから、「ファ、ラ、ド、ソ」の上昇音階の繰り返しはうるさすぎるくらいで丁度良いのと違うか? これでは宝の持ち腐れである。ハイティンクがUSAのオケの常任の座に、それもショルティ時代は同国でもトップクラスのド派手音色で名を轟かせたシカゴ響のシェフに就くということで、私が変に期待をかけすぎていただけと言われたら返す言葉はないが、ちょっとガッカリである。指揮者は芸風を変えるつもりなど更々なかったのかもしれないが、こうなると(さすがに「角を矯めて牛を殺す」は言い過ぎとしても)ミスマッチの感は否めない。この楽章の演奏時間は旧録より40秒ほど伸びているのだが、私は「無駄に長い」という印象しか持てなかった。
 アダージョは78年盤とほとんど同じ(トラックタイムは22:24→22:26)である。堅実さが持ち味の指揮者ゆえ悪い演奏をするはずなどないのだが、残念ながらここも「特に良くもなし」であった。手抜きで申し訳ないが、今年初登場で1位に輝いたブロムシュテット&LGO盤のような「神々しさ」が全く感じられなかったことに尽きる。もうちょっとだけ書くと、淡泊に過ぎるということになるだろうか。(他に「無策」「薄味」なども浮かんできたが、褒め言葉に類するものではないからもう止めとこう。)
 ところが後半に入って様相がガラッと変わる。(ハーフタイム中の監督やコーチの指示によって見違えるように動きの良くなった球技団を見るようだ。もしかして録音日が違うのだろうか?)スケルツォは約30秒、フィナーレは1分近く長くなったが、それに十分見合うだけのゲインがあると思った。躍動感、華やかさ、滋味、風格など、ヘタにどれかを強調すればその代償として他が減じてしまうような特徴でさえ両立させているところが素晴らしい。ここにきてようやく本領発揮である。とはいえ、この曲では(既にヴァント&BPO盤評で述べたように)ちょっと遅すぎるのである。もはや勝敗は決したとして対戦相手が控え選手を出してきた後に点を返すような感じがする。
 ということで、結論としては冴えない印象のままに終わった78年盤と似たり寄ったりということになる。だが、よくよく考えてみれば、贔屓の指揮者と明言している割にはブルックナー録音で会心作と呼べるのが89番の2曲だけというのも全く困った話である。

おまけ(ダウンロード購入に関して)
 少し前になるが、ブルックナー・ファンサイトの総本山 "The Bruckner Discography" のマスター、J.F.Berky氏から配信されてきたメールによって米アマゾン(amazon.com)がMP3ファイルの販売を開始したと知った。早速訪れて "bruckner" で検索(ただしalbum title)したところ116件が出てきた。それらの多くは iTunes Storeでも扱っている音源のようだ。他ページでも触れたクライツベルクやロッホランの7番など未聴指揮者による比較的新しい録音も含まれており、しかも$8.99と(iTSでのアルバム1枚の通常価格1500JPYと比較すると)かなり安い。ちょっと迷う。さらに3.56USDという格安品もあった。うちロジェヴェンの0番やホルヴァートの4番あたりは買っても良いかな(特に前者は3番以前ゆえ評執筆の要もないし)と思ったのだが、あいにくダウンロード用アプリ(MP3 Downloads)がMac OS X (10.4 & up)対応のため、10.3.9の私には使えない。ところで、このような「廉価盤」としてゾルタイ(Zsoltay)およびリッツィオ(Lizzio)の9番が置かれているのを見てついつい笑ってしまった。言うまでもなく、彼らはアルフレッド・ショルツによって生み出された「幽霊指揮者」である。これはいかんやろ。ブックオフじゃないんだから。(ただしLizzioおよびZsoltay名義のブル9は、Pseudonyms=偽名としてもBerky氏のディスコグラフィには記載されていない。なので誰の演奏なのか少し気になる。)

7番のページ   ハイティンクのページ