交響曲第9番ニ短調
ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
89/12/12
Lucky Ball LB-0028

 81年ACO盤は言わずと知れた名盤だが、それ以降の9番演奏におけるハイティンクの円熟を確認しようにもできなかった。(もちろんVPOとの全集録音の頓挫がケチの付き始めである。とはいえ、35番がイマイチだったことから考えるに、お流れとなったのは必ずしも悪くなかったといえるかもしれない。)しびれを切らした私はヤフオクで発見した当盤の入手を試みた。値段もまずまずだったしオケがBPOだったので躊躇はなかった。(同じ頃に「国内総生産」レーベルからリリースされた57番も見かけたが、オケがオケだけに二の足を踏んでしまった。)
 さて、81年盤の出来がとにかく素晴らしかっただけに演奏に対する全く不安はなかった。試聴したところ録音も上質で問題なしと判明。要は申し分なしということだが、具体的に美点を挙げるとなると難しい。両盤の演奏時間はほとんど同じ(第3楽章が少し伸びた程度)で、解釈にも極端に変わったところは確認できなかったから。とりあえずオケの違いが印象に大きな影響を及ぼしていることは間違いない。やはりBPOの厚みのある響きはACOとは一味も二味も違う。全奏時は迫力満点だし、アダージョでの弦のうねりにも格別の味わいがある。といって一部指揮者のディスクのように響きが重々しくなっていないのはありがたい。(クリアーな音質のお陰?)そのためスケール感と機動性が増大するという良い結果だけをもたらしている。ここで9番の所有リストを改めて眺めてみたが、BPOによる演奏としては次点のカラヤン75年盤を引き離しダントツであると思った。ただし、指揮者の貢献がいかほどのものかは判らない。そこがいかにも彼らしいといえるが・・・・
 唯一残念だったのは第1楽章コーダが真っ当だったこと。ティンパニ奏者に頼んで断られたのか、それとも初めから遠慮して言い出さなかったのかは定かでないけれど。ところで、青裏販売業者のサイトに「カラヤンが没した年のライヴ。カラヤンの後継はハイティンクという噂が当時あったが、この組み合わせの妙技を聴いていると、惜しかった気がする。」という当盤コメントが出ていた。実際この演奏はそれにも激しく同意したくなるだけの完成度を誇っているのだが、もしハイティンクに「つべこべ言わず俺の指図する通りにやれ!」とばかり「ダダーン」を叩かせるだけの強引さがあったら、本当に選ばれていたのではないかという気もする。独裁者の振る舞いは彼に全く似つかわしくないとは思うが・・・・

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