交響曲第7番ホ長調
ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
78/10/09〜10
PHILIPS 446 580-2

 ACOと再録音した後期3曲中でおそらく評価が最も低いのがこの7番であろう。私の印象も非常に薄い。「何の変哲もない」「自然そのもの」という演奏スタイルはこの曲にはピッタリのはずなのだが、なぜだろう? 私が考えるに、ヨッフムやマタチッチなど他の曲では好き勝手なことをやりたがる指揮者でも、この7番だけは自然体に聞こえるけれども、それは彼らがそう聞こえるようにいろいろ工夫をしているからである。ある程度ブルックナーを聞き込むようになって耳が肥えてくると、演奏に浸るのではなくて、指揮者のそのような工夫を楽しむようになるのである。そして、そういう贅沢を覚えた耳には真に「自然体」の演奏は物足りなく感じてしまうということではないか?
 もし私が8番や9番と同時期(最初期)に当盤を買っていたら、(初めて買った7番がカラヤン75年盤でなかったら)、当然のことながらこの演奏が私のスタンダードになっていたはずであり、そうなれば7番のランキングはガラッと変わっていたに違いない。もしかしたら当盤、アイヒホルン盤、朝比奈75年盤(聖フロリアン)あたりがベストスリーになっていたかもしれない。
 なお、わずか3年の違いであるが、後にデジタル録音された8&9番と比べると当盤は音のクリアーさという点でかなり劣っている。これも残念である。

追記:ハイティンク唯一の7番正規盤の評価がこんなんでいいのか自分でも疑問に思ったが、特に書くことが思い付かないのだから仕方がない。ただ、最近入手した小澤&サイトウ・キネン盤とトラック・タイムが非常に近いことに気が付いたので、それと聴き比べてみたが、「やっぱり印象薄いなあ」というのが正直なところである。美しさの表現に徹した小澤のような「こだわり」が全然感じられないのだ。当盤も美しいには違いないが、それはオケ&ホールの響きによるもので、指揮者は「さあさあ皆さん、この美しさを堪能して下さい」と投げ出してしまっているような気がしないでもない。書き始めたが結局は暴言まがいになってしまった。のでもう止める。

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