ゲオルク・ショルティ

交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
 シカゴ交響楽団
 バイエルン放送交響楽団

交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
 シカゴ交響楽団

交響曲第5番変ロ長調
 シカゴ交響楽団

交響曲第6番イ長調
 シカゴ交響楽団

交響曲第7番ホ長調
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 シカゴ交響楽団

交響曲第8番ハ短調
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 シカゴ交響楽団

交響曲第9番ニ短調
 シカゴ交響楽団

 この人のディスクで初めて買ったのが、シフ独奏によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(ドホナーニの「童謡の主題による変奏曲」がカップリング)であった。それには思い出がある。私は院生時代、研究室の談話室で昼食を摂る際にはラジカセでクラシックのCDを1枚(長くても60分ほど)聴くのを日常としていた。ある日、そのディスクを再生していたら、いつも一緒にお昼を食べていた後輩の院生(女性)が耐えかねたように「もう止めて下さい!」と叫んだ。その人は決してクラシックが嫌いという訳ではなく、時には曲や演奏に関する短いコメントなども寄せてくれていたのだが、その日はよっぽど神経に障ったらしい。が、私も彼女がそう叫びたくなった気持ちは理解できなくもない。この演奏、とにかくオーケストラの音がデカイ。(許光俊は「クラシックCD名盤バトル」でボロクソに書いていたが、)シフのピアノがナヨナヨしているため余計に引き立つ。(ただし、このCDではその対比が面白い。)特に第1楽章の終わり方が凄い。協奏曲というよりは長大な交響曲のエンディングのようである(「Ya mete」が出たのがココ)。他にもティンパニが独奏楽器のごとく立ち回る箇所が頻発し、ピアノを完全に食ってしまっている。ティンパニの強烈なアクセントに全開のブラスが加わったときの喧しさといったら! 到底落ち着いて飯を食っていることなどできなかったのであろう。私は平気だったが・・・・その後に名盤あるいは決定盤とされるリヒテル&カラヤン盤やアルゲリッチ&コンドラシン盤も入手したが、ショルティ盤があまりにも強烈だったため、これらを聴いてもどうも物足りなかった。要はブル6と同じである(6番目次ページ参照)。改めてこの人の他のディスク(リストの「ファウスト交響曲」と「前奏曲」他の管弦楽曲集、ロシア音楽集)も棚から取り出して聴いてみたが、(BPO、LPO、LSOなどシカゴ響以外のオーケストラとの共演であっても)こんなんばっかりである。CSOとの「展覧会の絵」は私のランキングではチェリビダッケやヴァントに大きく水を空けて堂々の1位である。
 そういえば、ハイドンの94&100&101番も借りて聴いたことがあるが、「驚愕」2楽章の例の部分はもちろんのこと、とにかく最初から最後まで喧しかった。が、彼の芸風はハイドンには合っていると思う。3曲とも切れ味抜群の名演だった。一方モーツァルトは聴きたくない。ついでに書くと、ベートーヴェンは「英雄」しか聴いたことがない。ただし、CSOとの最初の録音(73年)である(註)。ブル5のページにはショルティ&CSOのディスクに特有の響きについて書いたが、ちょっと重心が上にあって明るい感じのベートーヴェンを聴いて、「これはちょっと勘弁してほしいなあ」と思った。あまりにも一本調子に聞こえたのである。が、既にどこかで書いたかもしれないが、ブルックナーでは「一本調子」は必ずしもマイナスにならない。「ミニマル・ミュージックの元祖」とまで言われることもある彼の交響曲では、曲によって絶大な威力を発揮することもある。

註:吉田秀和が「世界の指揮者」で取り上げたウィーン・フィルとの59年旧盤、ドイツの新聞でベスト・レコードに選ばれているのを見て、「なるほど、ね」と声を出したいう演奏は聴いていない。その代わりとして、2004年11月の廃盤CD大ディスカウントフェアにて同オケとの第5&7番(POCL-4575、ともに58年)をブル7旧盤とともに購入した。「運命」の第1楽章は素晴らしかった。勢いがあるだけでなく見通しも良く(パートの分離に優れるなど、この時代としては驚異的な高音質のためか?)、快速テンポの演奏としてはライナーやカラヤンはおろか、ステレオ録音では「決定盤」とされることも少なくないクライバー盤すら上回っていると思った。ところが第2楽章で失速。一転してスローテンポを採っているのでバランスが悪いという以上に、その遅いテンポをオーケストラが支え切れていないように感じてしまった。要は中身スカスカと聞こえてしまったということだ。後半2楽章の出来が悪くないだけに何とも惜しまれる。一方の第7は最初から最後まで非常に充実しており、同じ疾走型でもクライバー盤のように時に空回り、上滑りしていると思えるようなことはなかった。この頃のVPOは音色も技術も素晴らしかったという記述を方々で目にしてはいたが、それが実感できた1枚だった。なお、98年11月1日に同時発売された「英雄」旧録音(POCL-4574)はフェアに出品されていなかったが、まだ廃盤扱いにはなっていないのだろうか? あるいは吉田の影響力のお陰で、いまだに売れ続けているのかもしれない。(今年度のフェアは2度にわたって実施されるということで、次のクラシックCDの販売開始は2005年2月に予定されているのだが、もしそこで見つけたら絶対買いだ。→結局出品されなかった。それどころか、第2回のセールでは欲しいと思うような品は全くなかった。→同年9月に楽天フリマから入手した。)

2005年2月21日記
 明日から来月23日までナミビア出張である。指揮者別ページ(目次)には当初「3月up予定」と書いたのだが、帰国直後にアップしたとしても3月はわずか8日しか残っていない。そこで、出発前に何とか仕上げることができたショルティのページを1ヶ月繰り上げて掲載することにした。万が一、飛行機が墜っこちる、あるいは向こうで不測の事態(毒蛇に噛まれる、熱帯熱マラリアに罹って手遅れになる、etc.)に見舞われることにでもなれば、文字通りこれが「絶筆」となる。(3月24日追記:このような事態は回避された。)

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