交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
ゲオルク・ショルティ指揮バイエルン放送交響楽団
93/06/10
En Larmes ELS 01-110

 ショルティ晩年の澄み切った名演。純音楽的に進むその解釈は
 一切の無駄な力みが無く、枯淡の境地に達している。音質良好。

 上は通販サイトの紹介文である。シューリヒトのページでも触れたが、「晩年の演奏だからといって何でも『枯淡(の境地)』と書けばいいってもんじゃねえぞ!」と執筆者の家に怒鳴り込みに行きたい気分である。そもそも、これはショルティが死去する4年も前の演奏である。最晩年まで若々しい演奏を聴かせてくれた彼に対して失礼ではないか。CSOとの正規盤と同じくノヴァーク2稿(スケルツォにコーダ付き)であり、録音時期も7ヶ月しか隔たっていないので解釈にも演奏時間にも大きな違いはない。ここでも激しいところは手を抜かずにオケを鳴らしまくっており、地味な2稿ながら全く退屈させないのは流石だが、当盤はそれ以上にライブ特有のノリの良さがある。(ちなみに正規輸入盤のブックレットには表記がないため、それがスタジオ録音かライブ収録なのか不明である。)例えば両端楽章のコーダはやや速めに進め、土壇場で一気にテンポを落として大見得を切っている。効果満点で、終演後の満場の拍手にも納得がいく。その一方で、CSO独特の派手派手な音色ではないので、全体としては落ち着いているように聞こえる。何せCSOとの演奏が非常に優れているので、敢えてこのCD-Rを求める必要はないだろう。(とはいえ、正規録音も国内盤、輸入盤を問わず単品では入手が容易ではなくなっているようだが・・・・)
 当盤の入手経路はヴァント5番NDR98年盤(sardana)のページに書いた通り。ショルティのブルックナーについても同曲異工の比較がしたかったので、まさに願ったり適ったりであった。結果としては上に述べたように大きな違いはなかった。ということは、7番VPO盤ページなどで採り上げた問題に一応の回答が得られたということである。つまり、シカゴ響常任時代に出来上がったショルティの芸風にVPOが付いていけなかったのは、オケの技量が低下したことが主因だったということである。当盤の名演奏を聴けば、晩年のショルティのスタイルが(仮に完全な新大陸仕様になっていたとしても)ヨーロッパでもちゃんと通用するということ、そしてBRSOは不慣れなスタイルにも十分対応できるだけの能力を備えていることはあまりにも明らかだから。
 それにしても、バイエルン放送響による3番はクーベリック、ザンデルリンク、テンシュテット、そしてこのショルティと、いずれも超が付くほどの名演となっている。このオケの腕が優れているのは今さら述べるまでもなく、他の曲でも名盤は少なくないのだが、3番の演奏レベルは頭一つ以上抜けているように思う。特に相性の良い理由が何かあるのだろうか?

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