交響曲第5番変ロ長調
ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団
80/01
LONDON 425 008-2

 カラヤン盤と同じく、この演奏も再発された場合に1枚に収まるか気になるところである。カラヤンの方は1番とのカップリングで、それなりに満足できるが、当盤はシェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲」との併録なのであんまり嬉しくない。(同曲は既にカラヤン&BPO盤を持っていた。)バルトークのオケコンなら(新盤、旧盤を問わず)満足度は大幅増だったところだ。手に入れてしまった品について今更どうこう言ってもしょうがないので本題に入る。(追記:上記2枚組はamazon.comからUS$20強で入手した中古であるが、何と2004年7月に輸入廉価盤のEloquenceシリーズが再発されてしまった。トータル79分半の演奏が1枚に収められており、hmv.co.jpの販売価格は1000円足らず。私が地団駄を踏んだのは言うまでもない。)
 さて、当盤では第1楽章の1分10秒と1分39秒の2度にわたって驚かされる。並の演奏では「ドーーーーミソドー」と聞こえるところで、当盤は「ドーーーーミッソッドー」とやるのである。(11分22秒でも出てくる。)何か変なことをやらずにいられない。さながら「クラシック界の妖刀使い」といったところか。ここで思ったのだが、この人のリズム感覚は普通の指揮者とちょっと違うのではないだろうか? あのスイング全開の6番1楽章など、福崎の3二飛成(6番ページ参照)と同じく同業者には思いもつかないのではないかという気がする。そして、そのリズムの奇妙さを際立たせているのがティンパニである。VPOとの8番と聴き比べれば明らかなのだが、ショルティ&CSOコンビのCDで聴かれるティンパニの音色はブルックナーに限らずいつも独特である。「ドン」という音ではなく、「ポン」というような音で弾力を感じるのだ。それゆえに弾むようなショルティの演奏には欠かせない。(特にスケルツォでは。)6番で奏者全員が指揮者と一緒にウキウキして演奏しているように聞こえ、それがこちらに伝染したのもそのためである。この楽章の2分23秒や19分45秒など全開で鳴るところなど、明るい音色のブラスと軽いティンパニが際立っているが、ブルックナーとしてはちょっと異様な響きである。そして、不幸なことにそれがこの5番では災いしているように思う。何せ「ゴチックの大伽藍のような」(←金子建志だったっけ?)などと評される曲である。音による建造物だけに土台がドシッとしていないとちょっと困る。完成度ではヴァント盤やカラヤン盤にも決して引けを取らないのだが、重量感が不足しているのはこの曲では痛すぎである。特に聴かせ所である両端楽章のエンディングでは。

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