カルロ・マリア・ジュリーニ

交響曲第2番ハ短調
  ウィーン交響楽団

交響曲第7番ホ長調
 フィルハーモニア管弦楽団
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第8番ハ短調
 フィルハーモニア管弦楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第9番ニ短調
 シカゴ交響楽団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 シュトゥットガルト放送交響楽団

 クレンペラーと同様、ジュリーニは比較的早い時期からCDを買って聴いていた。クラシックの聴き始めにはブルックナーとマーラーの交響曲と並行して声楽入りの曲(多くは宗教音楽)を集めていたからである。今でも棚にはフォーレとヴェルディの「レクイエム」の初CD化盤が載っている。前者はFM愛知土曜夕方のクラシック番組(東邦ガス提供)で聴いて非常に感銘を受けたため、少々高くても目をつぶって買った。「決定盤」として名高いコルボ旧盤を後に中古屋で入手し、それもかなり気に入ってはいるけれども、ジュリーニ盤が「マイ・ベスト」であることに変わりはない。(「決定盤」のもう一方の雄であるクリュイタンス盤もやはり中古で買った。こちらは宇野功芳と同じ評価になってしまうのが気にくわないが、どこがよいのかさっぱりわからない。ひとえにソプラノのせいである。ロス・アンヘレスの声は全く美しく聞こえない、どころか大嫌いである。)後者は「名盤の声の高かった演奏がついにCD化された」といった「音楽の友」の新譜紹介記事を真に受けたための購入であるが、壮絶としかいいようのない演奏に感動し、同じく不動の愛聴盤となった。ただし、ダイナミック・レンジが異常に大きいため、下宿ではヘッドフォンなしで聴くことができないのは悩みの種だった。 冒頭部分が辛うじて聞こえるレベルに音量を設定しても、この曲で繰り返し出てくる「怒りの日」にて皮が張り裂けんばかりに強打されるティンパニの音がデカすぎるため、下の部屋から苦情が持ち込まれたのである。これに慣れてしまったので、「怒りの日」を美しく流麗に演奏しているカラヤンやムーティ盤を後に聴いても全く物足りなかった。他にはこれまた中古で入手した「モツレク」新盤も所有している。これは先述した「フォーレク」「ヴェルレク」と比べると声楽陣がもう一つ弱いと思ったので、より評判の高い旧盤の購入も視野に入れている。(「クラシック名盤&裏名盤ガイド」では、「ジュリーニ最盛期の代表盤」として馬場広信が本命盤に挙げている。ソリストには強力メンバーを揃えており「四重唱がもたらすのは、救いと呼ぶにはあまりにもかけがえのない、癒し。何年かに一度、本当に心がボロボロになったときに、そっと取り出して聴く・・・・そういうディスクだ」とのことである。とはいえ、新盤の方も「近年の巨匠の瞑想性を強く感じさせる。万人向けとはいいがたいが、一度心の琴線に触れたら、決して消えることのない世界がある」とあるので、それが感じられるようになるまで残しておくつもりだ。)
 しかし、私にとってジュリーニといえば何といってもブラームスである。その辺りについては「私のクラシック遍歴」の最終部分に書かれている。交響曲第1番は(間違えて買ったが今でもランキング1位を譲らない)LAPO盤の他、廉価で再発されたVPOとの14番を所持している。実は1番VPO盤は3番とカップリングされた2枚組を中古屋で買ったものの、ある日突然その緩さが耐えられなくなって再度売りに出し、後に上記廉価盤の1番の新品を買うという実にアホなことをした。(セルといいワルターといい、ブラームスについてはなぜかこの種の迷走が多い。)また、やはり「クラシック名盤&裏名盤ガイド」にて高畑直文が「『立派だけど遅くて退屈』という彼に対するもともとおかしい評価は、この盤によって粉砕されるだろう。しかも何度聴いても新鮮な驚きに満ちた感動が新たに沸き上がってくる、絶対聴いておく盤だ」として本命に推していた3番も廉価で再発されたら買い直すかもしれない。なお、2番VPO盤は愛知県芸術劇場のリスニングルームで聴いたものの全く気に入らなかったので、これからも聴こうとは思わない。一方、LAPO盤は「名曲名盤300」でも常に上位にランクされているほどの名盤と知って買ったのだが、これも1年も経たぬうちに中古屋へ逆戻りとなった。特に悪い印象を抱いた訳でもないにもかかわらず。現在は品薄のため中古市場でも人気商品となっている。全く惜しいことをしたものだ。(追記:ありがたいことにシューマンの「マンフレッド」序曲とカップリングされた国内盤が9月7日に廉価再発される予定である。もちろん予約する。)他にLAPOとの録音ということでは、「運命」「悲劇的」(シュベ4)のカップリング盤も同じ運命を辿った。せっかく手に入れた品を何でそんなに気前よく手放したのかといえば、当時は下宿のCDラックが一杯一杯だったのでリストラの嵐が吹き荒れていたのである。本当に悪い時期と重なったものだ。これから述べるブルックナー以外で残っているのは、他にフランクの交響曲のみである。数年前にBOOKOFFで買ったが、いくら何でもこの名演奏を見限る(聴限る?)ことはないだろう。
 ブルックナーはCD蒐集開始時点で購入予定リストに加えたため、7〜9番のDG正規盤、および9番CSO盤は早々と聴いた。曲により首を傾げたくなる箇所もあったが、基本的には満足することができた。後に購入した78番のプロムスライヴ(BBC LEGENDS)も立派な演奏であるが、素晴らしい出来映えに圧倒されるというほどではなかったのは、この指揮者がコンスタントに実力を発揮するタイプだからであろう。ゆえに、上記DG正規盤とほぼ同日とされる一発録りの4枚組(sardana)のような「リアル・ライヴ」にまで手を伸ばそうとは思っていない。(実際、BPOとの7番はもう二つぐらいの印象だった。)

おまけ
 ヴァントを知るまではハイティンクと並んで最も好きな指揮者の1人だったため、Kさんへのメール中でもこの指揮者については何度か触れている。その中から一部抜粋して掲載しておく。

>  以前好きな指揮者を尋ねられた時に、僕はハイティンクだけを挙げて録音
> の少ないジュリーニのことは思い浮かばなかったのですが、実は彼も非常に
> 好きな指揮者の1人なのです。持っているCDはブラームスの1番2種類、
> 同2番(LAPO)と3番(VPO)、ベートーヴェン5番(LAPO)、モーツァルトと
> ヴェルディとフォーレのレクイエム(いずれもフィルハーモニア管)で、数
> はそれほど多くないのですが全て気に入っています。(このうち「ヴェルレク」
> だけが若い頃の火が出るような激しい演奏、他は独自の境地に踏み込んでか
> らの堂々としたテンポが特徴の演奏ですが、いずれも真摯さが感じられる名
> 演です。)音友の3回シリーズのインタビュー(イタリア人執筆)で、彼の謙
> 虚な人柄を知ってますます好きになりました。最近引退を表明したようで少
> し残念です。朝比奈やヴァントがまだ現役なのを見ても、肉体的にも精神的
> にもまだ続ける余力を残していたとは思いますが、彼自身熟考してのことな
> のだろうと想像します。ジュリーニは録音が少ないとともに、派手なことを
> 好まないというか演奏以外の場に登場することはほとんどなかったため、実
> 力に相応する人気はなかったのかもしれませんが(ハイティンクもそう)、そ
> れも彼の望むところだったのでしょう。(98/12/25)

こんなことを書きながらも、本文中で述べたように、この後にディスクを何枚も手放してしまった。返す返すも勿体ないことをしたと思っている。(2005年6月14日に91歳で逝去。もちろん、追悼のため当ページに挙げたディスクを集中して聴いた。合掌。)

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