クラウス・テンシュテット

交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
 バイエルン放送交響楽団

交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(84)
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(89)

交響曲第7番ホ長調
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

交響曲第8番ハ短調
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 テンシュテットといえば許光俊があちこちで褒めていたためにブルックナーとベートーヴェンのディスクを集めるようになったが、それ以前は全く注目していなかった。クラシックを聴き始めた頃に買った砂川しげひさ著「なんたってクラシック」では、「ぼくの好きな指揮者4人」(註)の1人に挙げられていたが、その似顔絵があまりにもショボくれていたため、「どうせ大したことないんだろう」と思い込んでしまったのである。また、同著に記された来日公演時のマーラーを聴いての印象も大袈裟で気に入らず、これも好ましくない先入観を抱いてしまう原因となった。(下で述べているように漫画家としての砂川は、技量はあれでも別に嫌いではない。しかし、エッセイストとしては、ロクに考えないまま文字にしたような乱暴かつ拙劣な文章に腹が立つことがままある。宇野功芳のように高慢でないのは救いだが・・・・)そもそも「テンシュテット」という響きが良くない。普段は外国人の名前に対して「1字多いんと違うか」と思うことが多い私だが、この場合はどうにも字足らずと感じてしまうのだ。「(シュミット=)イッセルシュテット」「ブロムシュテット」などと比べたら語呂があまりにもよろしくない。もし彼の名が「テンドンシュテット」とか「テンプラシュテット」だったなら、受ける印象は全く違ったものとなっていただろう。(そんな無茶な。)
 そんな訳で聴くのが相当に遅れた指揮者であるが、先述したように「世界最高のクラシック」での許の見事なテンシュテット評を読み、もしかしたら凄い実力の持ち主かもしれないと思うようになった。(それ以前に読んだ「クラシック名盤&裏名盤ガイド」中の「新世界」やマーラー36番の刺激的な批評も明らかにプラスの方向に作用した。)ところが、いざブルックナーを聴いてみようかと思った時にはEMI正規盤の48番は既に廃盤扱いとなっていた。幸いにして私はネットオークションで定価よりも安く(たしか2枚とも諸経費込みで2000円以下)入手することができた。(3000円以上に高騰していたのを何度か見た。)ただし、各ページに書くはずだが、それらを聴いての印象はもう一つで、あるいはスタジオ録音だと気合いが乗らないタイプなのかもしれないと思った。一方、ネット評も高かったBRSOとの3番は苦労の末にヤフオクで青裏(RE! DISCOVER)をゲット。こちらは期待をはるかに上回る出来だった。他にも78番にはドイツやUK、そしてUSAのオケとの共演盤が存在するようだが、今のところ出回っているのは青裏だけのようである。昨年(2005年)発売された3番(Profil)に続く一日も早い正規盤リリースが待たれる。(追記:同年12月にもLPOとの来日公演時の4番ライヴ盤が発売されたが、3000円近い高価格ためスルーしている。全然欲しくもないリハーサル風景を併録して2枚組になっているのも気に食わなかった。そんなボーナス付けるんやったら値段下げろ! これでは糞ゲー抱き合わせ販売と一緒ではないか。まあTDKのディスクはどうせ1年も待てば値崩れするから、と高をくくっている。ついでながら同月発売されたライトナーの7番も同様に見送り。「塔」通販では同じWeilblickレーベルによるケーゲルの3番LGO盤がオンラインセール価格として何と990円=6割引で売られていた。そうなるのを気長に待つ。→2006年6月追記:そのはずだったがウッカリで注文してしまった。)また、同じく許が絶讃していたこともあって、ベートーヴェンもライヴは素晴らしいに違いないと思って手を出すことになったのだが、LPOとの9番および15番他(BBC LEGENDS)、NDRとの7番+「ジュピター」(EMI)はどれもブル3以上に燃えまくっていて壮絶。といって完成度も全く落ちてはおらず大変気に入った。なお、私が持っている「店主」のディスクはここに挙げただけである。彼があのレーベルと契約していたのが不運であるとしか言いようがない。なにせ片っ端から廃盤あるいは生産中止にしてしまい、それ以後長いこと(ようやくにして昨年8番が出たが)再発しないという冷遇ぶりだったのだから。と責任転嫁して終わる。

註:他の3人(トスカニーニ、フルトヴェングラー、クライバー)も全然似てはいなかったが、かなり勇ましい指揮姿であった。つまりテンシュテットだけが圧倒的になさけなく描かれていたのである。この際だから砂川の本業である漫画についても触れておく。正直言ってプロとしてはヘタの部類に入る。そう考えているのは私だけではあるまい。あの本の挿絵は作曲家でも演奏家でも敢えて素人っぽく描いたのではないかとまで思っていたのだが、夏の全国高校野球期間中に朝日新聞に掲載された1コマ漫画も同様だった。とはいえ、私は彼の画風はさほど不快に感じない。(本当に酷いと思うのは「クラシックB級グルメ読本」に描き散らされていた最低レベルの漫画である。あれは許が「こんな名盤はいらない!」に描いた似顔絵をもはるかに下回る。)後年、同紙に連載された「Mr.ボオ」(後に「ワガハイ」へと改題)もナンセンス漫画としてそれなりに愉しんでいた。(ただし、某掲示板のクラ板になぜか立てられた彼のスレッドでの評価は辛辣を極め、「自分の払う新聞代が香具師に渡っていると考えただけで腹が立つ」というコメントまであった。)ヘタではあっても自分のスタイルを確立しているからである。これはNHK-FM「日曜喫茶室」でのはかま満緒(マスター役)か安野光雅(常連客役)の発言だと記憶しているが、「最近の若い漫画家は似顔絵を単に似せて描けば良いと勘違いしている」と嘆いていた。確かに私がその頃購読していたスポーツ関係の漫画(4コマ主体)月刊誌には、顔写真のラインをそのままなぞったようなお粗末な似顔絵が少なくなかった。ゆえに人物画として見れば決してヘタではないものの、顔の表情が必ずといっていいほど死んでいる。こういう作品しか描けない漫画家が一時期筍のように出現したが、いつしか姿を消してしまったのも当然だ。やはり顔の特徴を的確に捉え、それをある程度強調することによって誰が見ても判るように、そしてクスッと笑いが取れるように描かなければプロの仕事ではないと思う。(本人が見て「畜生、こんなメチャメチャに描きやがって! でも似てるなぁ。口惜しいけど・・・」と苦笑いする位で丁度良いのではないだろうか?)その点でダントツに上手いのは、現在超売れっ子のやくみつる(はたやまハッチ)であり、もう1人挙げるならば(関西ローカルながら)日刊スポーツで長年連載を続けている高岡凡太郎であろう。(野球4コマ界では東のはたやまに肩を並べる西の雄だと思う。コジローは全然その域に達していないし、いしいひさいちは誇張のしすぎでグロテスクになってしまっているため私は全く買えない。)ついでに書くと、「将棋世界」や「週刊将棋」にプロ棋士の漫画を描いているバトルロイヤル風間も名人級の腕前である。

戻る