交響曲第7番ホ長調
クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
84/05/10
LPO-0030

 ブルックナーの交響曲中でテンシュテットがレパートリーとしていた4曲(3478)のうち、唯一未聴だった7番は長らく「必修ながら未履修」という扱いだった。正規リリースは皆無、そしてネットオークションで時に見かけていた各種青裏(註)も価格面で折り合いが付かなかったのである。当盤のリリース情報を得た直後に注文を入れたのは言うまでもない。(註:当盤と同一日の演奏と思しきLPO盤の他、米合衆国のボストン響、シカゴ響、フィラデルフィア管、ニューヨーク・フィルといった古豪団体との共演盤が存在する。ついでながら、48番ではクリーヴランド管やデトロイト響との録音も出回っていた模様。どうやら店主は同国の蒼々たる名門オケからまさに引っ張りだこ状態だったようである。)
 さて、このロンドン・フィル自主製作盤は前に買った4番(LPO-0014)と同じくロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴということだが、残念なことに貧弱な音質という点までもが共通していた。とにかく拡がりや潤いに欠けるし、テープが損傷しているためか時に音が揺れる。ノイズも入りまくり。後に某掲示板の天守スレで「LPOとのブル7、エア・チェックからのマスタリングだね。4楽章で混信してる。」という書き込みを発見。大ガッカリである。その2つ下の「これでは正規録音として売るべきじゃなかったと思う」には激しく同意。こんなん売り物にすんな!
 ジャケットには "A BBC Recording"、ケース裏には "BBC RADIO" とあるから放送用の音源を使用していると思われる。ところが、ジュリーニやグッドール、ホーレンシュタインのプロムスでの演奏を収めていたIMG Artistsのディスク(BBCL XXXX-X)では、これほどまでに録音に対する不満を抱くことはなかった(註)から理解に苦しむ(註:コレクターによるエアチェック・テープを用いたグッドール&BBC響の9番はもちろん除く。)もしかすると、LPO側の提示してきた金額があまりにも少なかったことに機嫌を損ねたBBC関係者が故意に劣化したテープを渡したのではなかろうか? そんないらんことまで考えたくなった。
 もちろん陰謀説はタチの悪い冗談としても、これはテンシュテットの芸風が芸風だけに非常に痛い。第1楽章4分35秒でハ長調に転じ、徐々に加速するところを例にとってみよう。縦の線が微妙にずれているのが早くから確認できる。5分10秒過ぎからはそれがいっそう顕著になる。が、そんなことはお構いなしにピークに向かって猪突猛進するのが指揮者の持ち味である。ところが混濁した響きが妨げとなり、勢いの良さはまるで伝わってこない。結果として乱れだけが耳に残ることになる。6分過ぎの盛り上がりも同様。やはり痩せ細った音質のせいで荒っぽいだけの演奏としか聞こえない。9分05秒のファンファーレでラッパが落ちているのを聴いてとうとう萎えた。
 それでも当日の聴衆は十分堪能できたのであろう。終演後は大拍手&ブラヴォーの嵐である。だが私の耳には彼らの熱狂も白々しく響くだけであった。

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