交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
89/12/14
LPO-0014

 「犬」通販ですっかり馴染みになった「マルチバイキャンペーン税込価格」の1622円という安さについ手を伸ばしてしまったが、届いた当盤を前にちょっぴり後悔しているところである。テンシュテット&LPOのブル4なら既所有の84年東京ライヴに十分満足しているから。(しかも腹立たしいことに、ポイントの期限切れ直前に「塔」通販にて2990円で買ったTDK2枚組がセール価格として何と900円も値下げして売られている。せっかく苦労して失効を免れたポイント分がほとんどチャラになってしまったぢゃないか!)それでも当盤でのみ感じられる境地というものがあれば何とか格好は付くのであるが、さてさて。
 「犬」のユーザーレビュー(いまいち)に「録音の水準の甘さに驚いた」とあったので気にはなっていたが、売り物としての水準は一応クリアしている。しかしながら84年盤のみずみずしさとは比べるべくもない。音質は痩せまくりで、「極道コンビ」ことアイヒンガー&クラウスの現代版とも言いたくなる。そのせいかロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴ収録にもかかわらず不気味なほど静まりかえっており、臨場感は終演後の拍手まで全くといっていいほど伝わってこない。(文字通りの「死んだ録音」である。)そして、これがテンシュテットの芸風には壊滅的なダメージをもたらしているように思われてならない。(他の指揮者だったら印象はここまで落ちなかったかもしれない。)
 改めて84年盤を聴いてみたが、弦楽器に「引きずり気味に弾かせている」「意図的にずらして弾かせている」のいずれか、あるいは両方によって燦然と輝くような響きを実現している。これが(BPOとの共演からは感じられなかった)テンシュテット&LPOコンビ最大の持ち味だと私は今更ながら感服した訳だが、当盤の貧相な録音ではその美点が消し飛んでしまっている。両盤の第1楽章冒頭を3分も聴き比べてみれば、同じキンキラキンでも純金と真鍮(黄銅)ほどにも厳然とした違いが存在することは誰の耳にも判るはず。これではシンバルが炸裂する改訂版採用箇所、あるいは終楽章最初の爆発やコーダにおける本来なら豪華絢爛であるはずの響きも魅力半減だ。ただし終演後の聴衆の反応にも少なからぬ温度差が聞かれたことから、音質のみならず演奏自体にも原因を求めない訳にはいかない。やはり初来日ゆえ84年盤では火の玉のごとく燃え上がったのだろう。
 テンシュテットはケーゲルのような一期一会タイプではなかったようだし、仮に長期熟成型だったとしても60歳代に入ったばかりの指揮者に多くを望むのは無理なのだが、結局のところ5年を隔てた両盤の間に大きな解釈の違いを認めることもできなかった。ということで、私が新たに当盤を入手した意義は残念ながら何もなかったということになる。このコンビによる4番を聴いてみたいけれど少しでも安く上げたいという方には薦められるかもしれないが・・・・

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