交響曲第8番ハ短調
クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
82/09/24〜26
EMI TOCE-7573

 トータル75分台で84年の初発盤(CC38−3106〜7)や87年の「ベストクラシック100シリーズ」(CC30−9086〜7)では2枚組だったようだが、91年発売の当盤以降は1枚に収まっている。(マゼール盤のように早回しあるいは間引きという反則技に頼らずとも収まる時間だったのは幸いである。)実はこの位の時間の演奏が一番難しいのではないかと私は考えている。
 既に書いているように、トータル80分以上かければ曲の大きさを余すところなく表現することができる。(もちろん必ずしも「遅い=スケールが大きい」ではないが。)私もお腹いっぱいになれる。一方、最初から最後まで暴れまくって70分そこそこでケリを付けてしまうことも可能だろうし、聴き手も「爆演」として愉しめる。ところが、当盤のようなテンポ設定では下手をすれば「どっちつかず」「中途半端」に終わってしまうのではないか。などと不吉な予感を抱きつつ試聴したのであるが、実際のところはどうだったか?
 結論から言えば、それが不幸にも的中してしまったということである。第1楽章1分少し前は金管もティンパニも鳴りが全然足りない。1分26秒以降の弱々しさは「これが本当にテンシュテット?」と首を捻らずにはいられないほどだ。中間部(7〜8分台)も迫力不足のままスタスタ進んでしまう。これでは4番同様にノッペリした演奏にしか聞こえない。(ついでながら4番と8番のテンポ設定は逆の方が絶対に良かった。)12分25秒からのカタストロフも全然盛り上がらない。これはニュートラルな英国のオケを選んだことも敗因かもしれない。第2楽章や第4楽章はそれなりに激しいが、とにかく腰が軽いと感じてしまうのが残念である。最後のスタスタミレドはその最たるもの。以降も同じことの繰り返しになるのが目に見えているのでもう止める。(なお、アダージョは結構美しいと聞いたが、クライマックス直後のケレンはどうなのだろう? 短調に戻ってから20分55秒〜21分16秒の低弦が粘りに粘るが、それまでのアッサリ風味とはアンバランスである。)
 何にせよ、中庸テンポによる模範的演奏といえばその通りなのかもしれないが、この指揮者はスタジオ録音になると安全運転に傾きすぎるようだ。(大昔に同級生から借りて聴いたブラ1も全く物足りなかった。)ライヴとの落差があまりに大きすぎるため、そのように感じるということは否めないけれども、やはり「借りてきた猫」という印象を受けてしまうのだ。こうなるとブル8におけるテンシュテットの本領はやはり海賊盤で確かめる以外ないのだろうか? 青裏が5種類、それも全て違うオケとの共演(ベルリン・フィル、ボストン響、シカゴ響、北ドイツ放送響、フィラデルフィア管)がリリースされているようだが、さて・・・・・・・どうする?

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