交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
クラウス・テンシュテット指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
81/12/13〜16
EMI TOCE-7572

 ムーティ盤のページでは、あの演奏を「(カラヤンの)劣化コピー」扱いしてさんざん悪し様に述べた。しかしながら今更ながらに気付いてみれば、その4年前にEMIは同じオケを使ってテンシュテットにも録音させていたのであった。そして、こちらもまた堂々テンポによる豪華絢爛演奏となっている。つまり当盤こそが「元祖劣化コピー」として槍玉に挙げられるべきだったのだ。(ムーティ様におきましては大変失礼しました。)トータルタイム、および第2楽章以外のトラックタイムもカラヤン70年盤とかなり近い。また、第1楽章コラールのティンパニ付加にとどまらず、カラヤンが自粛していた第4楽章序盤のシンバルまで盛大に鳴らせている。これは「帝王」が75年の再録音で復活させたことの影響だろうか?
 第1楽章2分過ぎ「ドーソーファミレド」の馬力はやはり凄い。音質が同レーベルのカラヤン盤やムーティ盤ほどは暑苦しいないため、それを満喫できる。(CD番号が1つ違いの8番とともに当盤は「SUPERMASTERS」シリーズとして発売されているが、「Balance engineer: John Kurlender」とあるだけで、あのO氏の名前は影も形もない。あるいはそれのお陰だろうか?)ここの充実ぶりはあのヴァント盤にも決して引けを取らない。と思ったのも束の間、2分24秒で一瞬妙な響きが耳に飛び込んでくる。(ハ長調で)「ソードーミファソファー」の「ソ」で特定パート(ブラス?)が落ちているのだ。ちょっとガッカリである。が、それだけでは終わらなかった。5分14秒以降も随分と弛んでいるように聞こえてしまう。9分16秒からも荒っぽい。ただ威勢良く吹き鳴らしているだけ。ヴァント盤の完璧演奏を知っている人であれば必ずやそのように感じ取るに違いないと思う。
 たまには良いところも挙げよう。10分58秒からのコラールは素晴らしい。素人の私には楽章のクライマックスをここに持ってくるのが正しいのか正しくないのかが判らないのだが、もしピークを形成しようとするならばカラヤンやテンシュテットのようにティンパニも加えて徹底的にやるしかないのでは、とふと思った。(さもなくばヴァントのようにサラッと流すか。)
 以降も迫力と粗さを交替で感じつつ聴き進む。アダージョ終盤、スケルツォ主部、そして終楽章冒頭の輝かしさは予想通り。いや、シンバルの入ってくるところは予想以上だった。そして締め括りがまた凄まじい。「ミーソーソミーソーソ・・・・」と「ソードードソードード・・・・」を吹くブラス、「ドソミドソドドソミドソド・・・・」の対旋律を吹くホルンが競い合い(前者がやや優勢だが、対旋律が比較的良く聴き取れるムーティ盤がノヴァーク版使用であるのに対し、テンシュテットはカラヤンと同じハース版を用いているからであろう)、それに最強打のティンパニが加わってまさに阿鼻叫喚の様相を呈している。ところが管楽器のリズムが微妙にズレている。まさか揃わないまま尻すぼみで終わってしまう(最後の「ジャン」が決まらない)のではないか、それでは宇野&日大管盤と一緒じゃないかと危機感を抱いた次の瞬間である。少し引っ張って(一瞬の間を置いて)から豪快な「グァン」が来た。やられた。
 ということで、最後の最後でこそケレンを見せたものの、全体としては優等生みたいな演奏だと思った。スタジオ録音だから当然なのかもしれないが、ここにはベートーヴェンのライヴ盤で聞かれた激しさはない。また、遅めの基本テンポを設定してもザンデルリンクのように絶妙な音量とテンポの調節が行われていれば違った結果となっていたのだろうが、結局のところは平板という印象しか残らず、「つまんなーい」と不満を覚えたのである。当盤ではテンシュテットのポテンシャルの半分も発揮されていないように感じてしまう。こうなると目次ページに書いたこと(=TDKの来日公演盤はスルー)を撤回したくもなってくるのだが・・・・・・

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