交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
アンドレアス・デルフス指揮ミルウォーキー交響楽団
03/04
MSO Classics MSO-22(ダウンロード購入)

 入手経路は上記の通りだが、iTunes Music Storeの1曲150〜200円という価格設定は果たして妥当だろうか? MPEG4フォーマットゆえAIFFファイルなどと比べたら音質に劣るのは間違いないというのに。さらに言えば、アルバム1枚落とすのに1500円も要するのであれば下手をするとHMV通販のマルチバイ割引価格を上回ってしまう。事実そういうケースが頻繁に起こっている。もちろん解説書はないし自分でメディアを用意しなければならないというのに誰がそんなもん買うか!(ついでに糾弾すると、「犬」に限らず通販サイトの多くは試聴やダウンロードに関してMacユーザを明らかにないがしろにしている。「今に目に物言わせてくれる」が完全に遠吠えなのが悲しい。)私的には1曲100円、1枚1000円がいいところだと思う。まあアルバムの中で気に入った特定曲のみ欲しい場合には現行価格でも利用するかもしれないが・・・・
 さて、iTunesによる音楽再生中に何気なくストアに入って "bruckner" で検索したところ、500件近く出てきてビックリした。(トラック単位の結果表示なので大変見づらいし、指揮者名がすぐに判明しないのは致命的欠陥である。)レギュラー盤は大部分が1500円だったが、中には2400円とか3000円という品もあった。一方、ナクソスは800ないし900円だった。ちなみにArchipelやClassica d'Oroといったマイナーレーベルによる歴史的録音も扱っているのが興味深い。ついでながら、スクロヴァチェフスキ&ミネソタ響の9番(Reference Recordings,RR81)も売っていたが、なぜか17トラックに分割されており、それで揃えると2550円(150×17)にも上ってしまう。もちろんアルバム単位で買えば1500円で済むけれど。
 何にしても先述した割高感のため買う気は更々なかったのだが、アルバムの一覧画面に表示された「¥600」の文字列が目を引いた。うち1点は先のClassica d'Oroによるフルヴェンの8番(CDC-1031)で既所有音源("Berlin Philharmonic Orchestra & Wilhelm Furtwangler" と表記されているが実際にはVPOとの44年録音)のためスルー。気になったのがもう1点である。"Andreas Delfs & Milwaukee Symphony Orchestra" は指揮者、オケ名ともに全く馴染みがなかったけれども何せ値段が値段(送料等の諸経費が不要なので600円ポッキリ)である。1件だけながらカスタマーレビューは最高評価の5つ星(「世の中には、知られなくても名指揮者がいるものだ!」のコメントあり)だったし、試聴した印象も悪くなかった(終楽章最初の爆発など迫力十分)ので購入に踏み切った。
 第1楽章のトラックタイムは約20分でゆったりした出だし。やはり私の好みはこの辺りのようだ。1分52秒以降の全奏が思いの外おとなしい。ショルティ&シカゴ響に代表されるようなUSAスタイル(?)のハデハデ、イケイケ演奏とは全く異なる。そういえば、どこかのサイトに「ミルウォーキー響は米国のオーケストラ中で最も音色が地味」などと書いてあったと思い当たった。(ただし捜しても見つからなかったので別団体の可能性もある。)かといって東欧系オケのような渋さを感じさせる響きとも違うが、何にしても落ち着いているという印象を受けたのは確かである。ところが9分少し前のティンパニ乱打を引き金として短調の展開部は激しく燃え上がる。再び長調に戻ってからの鋭い金管の咆吼(9分38秒〜)も耳を引く。直後のコラール部分(10分33秒)の「三位一体感」は、これまで最高と思っていたヴァント&BPO盤にも匹敵するだろう。ただしトランペットが一度引いてから最強音を出すことに対して少々あざとさを感じてしまうのが惜しい。以降は文句を付けるところが全くなかった。弦、管、打楽器が決して「オレがオレが」にならず、それぞれ主役を受け持つところでは全力を出し、それ以外では引き立て役を見事に演じ切っているように思った。よって「ワークシェアリング型名演」といえるかもしれない。録音も超優秀で、懸念された圧縮による音質劣化も特に認められず。残念なのは終演後の拍手。少なくとも10秒は欲しいところだが、始まったと思う間もなくフェードアウトしてしまう。こんな中途半端なことをするくらいなら最初から入れない方が良かった。とはいえ、演奏自体への満足度が極めて高いことに変わりはない。これからストアに行ってレビューを書き込んでくるとするか。
 なお、ハードディスクの不調のため大学から貸与を受けているiMac G5 を違うマシンと代えてもらったところ、ダウンロードした音声ファイルがiTunesで全く再生できなくなった。認証を求められたのでパスワードを入れても「認証情報の保存中にエラーが発生しました」というメッセージが出てしまう。ファイル共有するつもりがないから不要だと考え、共有フォルダを捨ててしまったのが原因と判るまでに結構時間を食った。3種のアクセス権(オーナー、グループ、その他)を全て「読み/書き」に設定した「共有」または「Shared」という名のフォルダが「ユーザ」フォルダ内にないとダメらしい。注意されたし。(詳細についてはこちらを参照のこと。)

2007年3月追記
 今年1月からミルウォーキー響のダウンロード・ストア(download.mso.org)にてデルフス指揮による6&7番についてもダウンロード購入できるようになった。共にMP3フォーマットによる音声ファイルで1曲当たり$4.99と安価である。(他にマーラー、ワーグナー、ハイドン、サン=サーンスなども売っている。)ただし、私としてはiTunes Storeのようなアートワーク(註)が入手できないことには買う気が起こらない。(註:それを利用すればCDケースにピッタリ収まってくれるジャケット(曲目&収録時間掲載)をプリントアウトできる。)

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交響曲第6番イ長調
アンドレアス・デルフス指揮ミルウォーキー交響楽団
02/06/06〜08
MSO Classics MSO-38(ダウンロード購入)

 久しぶりにiTunes Store で「ブルックナー」および "Bruckner" で検索し、またしても驚いてしまった。表示件数が格段に増えていたからである。(ディスク単位でも3桁に達していた。)うち大部分は各種通販からポリカーボネイト樹脂製のメディア(つまりCD)が入手可能な音源であったが、なぜか7番のみ私の耳に馴染みのないオケと指揮者による演奏が4点も販売されていた。"Orchestre Métropolitan du Grand Montréal & Yannick Nézet-Séguin"、"Aarhus Symphony Orchestra & James Loughran"、"Victor Symphony Orchestra&Yakov Kreizberg"、そして "Strasbourg Philharmonic Orchestra & Théodor Guschlbauer" である。ただし最初の3点については「犬」サイトが扱っていると遅ればせながら知った。(ちなみに同所での日本語表記はそれぞれ「ネゼ=セガン&グラン・モントリオール・メトロポリタン管弦楽団」、「ロッホラン&オーフス交響楽団」、「クライツベルク&ウィーン交響楽団」となっている。つまり先述の3番目にあった "Victor" は大ボケで、もちろん正しくは "Vienna" である。)要は私が見落としていただけであった。またグシュルバウアーといえば、アイヒホルンの死去による未完全集の穴埋めとして(後に134番を録音したジークハルトと共に)急遽採用されることになった0番の指揮者であったと思い出したが、ハイティンクと並んで宇野功芳の嘲笑の対象となったという記述をネット上で目にしたことからも、なかなかの実力者であると推察される。実際のところ試聴しての印象もまずまずだったので、いっそ全曲聴いてみたろかという考えも一瞬浮かんだものの、先の4番評に記したように音声ファイルのみに1500円払う気にはなれなかった。他の三者も試聴した限りながら爽やかな好演を成し遂げていると聞こえたけれど、結局は同じ理由で見送り。大幅な値下げを切望する。
 その一方で思いもかけぬ音源が安売りされていた。その代表格がProfilレーベルで、ハイティンク&SKDの6番やヴァント&MPOの4番が900円、少し前にリリースされた後者とSDRによる9番に至っては何と600円である。思わず地団駄を踏んでしまったが、さらに今年(2007年)に出たばかりのラトル&BPOの4番までが同価格だったのを見て、さすがに首を傾げずにはいられなかった。こんなんで利益出るんかいな?
 さて、上の3月追記分で「このストアでも扱ってくれたら」などと述べていたデルフス&MSOの67番であるが、嬉しいことに既発の4番と同じ(そしてUS$4.99とも大差ない)600円で売られていたため即刻カートに入れてダウンロードした。
 先に試聴した4番の出来から予想はしていたが、この6番でもケレンは極力排除され、あくまで折り目正しく進んでいく。こういう演奏に「無機的」などとケチを付けたがるような評論家には好きにさせておけばよい。(センセイ方がこのマイナーな音源を音楽雑誌などで採り上げるようなこともないだろうが・・・・)
 第1楽章の主題提示(0分50秒〜)にてティンパニ音が今ひとつ明瞭さに欠けると聞こえたことは惜しまれる。ここはショルティ盤のように(思わず「喧しいわ!」と言いたくなるほど)高らかに打ち鳴らす、さもなくば朝比奈盤のごとくドスの利いた低い打撃音を響かせて欲しかったところだ。ただし再現部(9分21秒〜)では見事な立ち回りを演じているから、これも4番と同じく立ち上がりは抑えて後で盛り上げようという指揮者の描いたシナリオ通りと考えて良いのだろう。1分15秒および19秒以降のフレージングが一風変わっていて少々もたれ気味と聞こえなくもないが、イケイケ前のめりでは退屈演奏に堕してしまいかねない曲だけに却ってこの方がありがたい。
 渋い音色を持ち味とするオケだけにアダージョは全楽章中で最も堪能できた。ほぼ19分というゆったりテンポながら間延びすることは皆無。お見事。といってスケルツォもフィナーレも迫力不足と感じたことはなかった。ということで、「様々なスタイルの演奏を聴き比べたい」という物好き、あるいは「究極の演奏を見つけ出してやろう」という野心家は別だが、普通(オタク未満)の愛好家には安価で入手可能なこの1種類が手元にあればそれで十分と思う。曲目解説はネット等からいくらでも手に入るだろうから。

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交響曲第7番ホ長調
アンドレアス・デルフス指揮ミルウォーキー交響楽団
00/04/21〜22
MSO Classics MSO-27(ダウンロード購入)

 米合衆国の団体としては地味系に属するオケのためか、ちょっと温和しすぎではないかと最初は思った。しかしながら、第1楽章コーダや第2楽章のクライマックスなどは燃えに燃えている。つまり押すところと引くところをちゃんと弁えているということである。上記2曲同様アンサンブルにも綻びは全く生じず、声を大にして指摘しなければならぬような難点は特に聴き出せなかった。(中途半端に収録された終曲後の拍手を除いて。これは何らかの方法でカットしてから青裏に焼くべきだと絶対に思う。)やはり紛れもない一級品の演奏であるが、楽章内/楽章間とも均整が実に良くとれていることを最大の美点に挙げたい。ここでも「精神性の欠如」のような難癖を付けたがるような輩は(もし現れたとしたら、だが)無視するに限る。というより、アダージョの長調部分で腰を落とし、ネットリ演奏を繰り広げているデルフスの方が「弛緩を防ぐため」にスタスタ駆け出した某指揮者よりも(強いて言うならば)はるかに高い精神性を備えていることにはならないだろうか?
 先日ブロムシュテット&ゲヴァントハウス管による同曲を首位の座に着けた私だが、あれと比べてどこが劣っているだろうと考え込んでしまった。ここで唐突ながらマイ・コレクション中で最多の8番は間もなく3桁に達しようとしており(98種類)、いずれも80種類台の479番が2位グループを形成し、3番以降で最も少ない6番でも40種類を超えている(2007年9月現在)。日本での知名度は決して高いとはいえない指揮者とオーケストラが非常に優れた演奏を(467番ともに)聴かせてくれているという事実は、長年にわたって無節操なディスク漁りを続けてきた私に対し反省を厳しく迫っているような気がしないでもない。要はこんなことをいつまでも続けていて良いものか思案に暮れているという訳である。さしあたっての懸案は「犬」通販に予約注文中の1枚(ベーム&バイエルン放送響の8番)をどうするか、だが・・・・やっぱ金欠にでもならん限り収まらんのだろうな、この病気は。

おまけ
 上記ベームの8番BRSO盤だが、9月20日発売の予定がなぜか前倒しで8月末に入荷、と思ったのも束の間、いつの間にか注文状況が「商品再手配中」に変わっており、どういう訳か販売ページも「出荷目安:廃盤」「こちらの商品は廃盤の為、申し訳ございませんがご注文いただけません」となっていた。「塔」の方も「販売していません」である。事情は知らないが(もしかして欠陥が発覚?)このままお蔵入りか?

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