コンドルカンキ(condorkanki)

 大学院生時代にH氏からクリスティーナとウーゴのベスト盤を借りた話から始める。トータル65分強のディスクを60分テープ(片面に31分半ほど入る)を収めようとしたため、どうしても1曲落とさざるを得ない状況に追い込まれた。全20曲を通しで聴いた私はトラック10のコンドルカンキ(Condorkanki)が単に騒がしいだけで最もつまらない曲と聴いたため、これを除外することにした。それを告げたところ彼は「バカ! あれは名曲なんだ」などと諭すような口調で言った。以後少し脱線する。
 少し前の話だが、「アホの坂田」こと坂田利夫は他の出演者から「アホ」と言われる度に「うれしー! もっと言ってー!!」とはしゃぎ回り、「バカ」と言われた途端に真顔になって「誰がバカや!」と激怒するという新技を一時期吉本新喜劇で披露していたことがある。確かに関西では相手を罵倒するために「アホ」を用いることは極めて少ない。(職場でも学生達の会話でしょっちゅう耳にするが喧嘩になったのは見たことがない。)関東ではこれに相当するのが「バカ」のようで、おそらく軽い気持ちで使っているのではないかと想像する。ゆえに東京人のH氏からバカ呼ばわりされても私は全然気にしなかったという訳である。けれど彼の方は私のフォルクローレに対するあまりの知識のなさを何とかしようと思ったのか、しばらくしてコンドルカンキ(今度はグループ名)の「アンデスの勇者たち」(1992年の来日記念盤)を貸してくれた。それに入っていた同曲は確かに素晴らしかった。と同時にヴォーカルのビビアーナ・カレアーガ(Viviana Careaga)のファンになった。その後しばらくしてディスクを買う気になったが、どうせなら違うアルバムにしようと思い、CDカタログに載っていたビビアーナ&コンドルカンキ(名称は変更されたが実質的には同じ団体)による「アンデスの彗星」を大学生協に注文して入手した。その数年後に滋賀で定職にありついた私は、ビビアーナの歌唱をもっと聴いてみたくなったため、同じく生協(今度は現職場の方)に足を運んで調べてみたところ、「“インカの伝説”コンドルカンキ・ベスト」は20曲(上記2種はいずれも15曲)も収録されていると知り、「しめしめ」と思いつつ注文を入れた。ところが届いてみれば、この品は彼女が加入する前の演奏を集めたもので、しかも大部分が器楽曲だった。つまり全くの期待外れだったということである。名古屋在住時代に中古屋で見かけた品(たぶん96年来日記念盤「平和へのリサイタル」)を見送ってしまったことを悔やんだけれども後の祭り。
 それに懲りたということもないのだが、他盤に手を出そうという気は完全に失せてしまった。98年にリリースされた「愛の情熱」はアマゾンで一応注文できるようだが、本当に入荷するかは不明だし、それ以前にコスト・パフォーマンスの悪さ(12曲しか収められていないのに税込3045円)のため買う気になれん。ただし「アンデスの勇者達」についてはテープの経年劣化が気になりだしていたこともあり、Yahoo! オークションから中古をゲットした。なお、当サイトで採り上げる3枚については邦題のみ記載することとしたが、各種通販サイトで検索してもオリジナルらしきディスクは見当たらず、国内盤のみが発売されたと思われるからである。

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