“インカの伝説”コンドルカンキ・ベスト(Condorkanki Collection)
1992
Victor VICP-173

 紹介ページに記した通り、当盤は大いなる「ガッカリ盤」である。これも既にどこかで述べているはずだが、私はクラシックとジャズを例外として器楽のみによる音楽を聴こうという意欲がまるで湧かないのだ。とはいえ評執筆を放棄する訳にもいかないから何か書いてみる。
 当盤を入手する前から知っていた曲が複数収められている。冒頭の "Poco a poco" がそうだ。1989年に某施設で西語のトレーニングを受けていた時に教わった。他に8曲目の "El Humahuaqueño" (言わずと知れた超有名曲の「花祭り」)も同様で、これらは今でも曲を耳にすれば歌詞がスラスラと出てくる。指導してくれたのは例のH氏である。そういえば彼と長野のKさん(クラシック関係のページで紹介済)、そして確かブータンに派遣されることになっていた女性によって急遽結成されたトリオ "Los Komaganeyos"(訓練所の所在地に因んだ命名)によるコンサートが何度か開かれたが、これらも当然演奏曲目に加えられていたに違いない。しかしながら、当盤に収録されているのはヴォーカルなしヴァージョンだから、しつこいようだが私は「迫力のない四重奏(ブックレットなどに写っているのは4人)を聞かされている」との印象しか持てない。それは3曲目 "El cóndor pasa" でも5曲目 "Condorkanki" でもみーんな一緒。
 かといって歌唱入りのトラックの出来が良いということは全くないから困ったものだ。6曲目 "Amigo" でのレネ・カレアーガの歌は改めて聴いても実になさけない限り。合唱に参加している他のメンバーも力不足である。加えて忙しないテンポを採用しているから何かに怯えているかのようにすら聞こえる。それゆえイベリア半島から来た侵略者に命乞いをしているインカの先住民の姿をつい思い浮かべてしまうのは自分だけだろうか? 多分その通りだとは思うが、とにかく私は(このジャンルに限らず)伝統的ポピュラー音楽については愛好者の気分を逆撫でするようなことしか書けないようである。やれやれ、こっちの方こそ困ったものである。(なお末尾に置かれたヴォーカル付きの "Condorkanki" からは力強さも感じられ、多少ながらマシといえる。)
 とはいえ、器楽の演奏技術には文句の付けようがないし(知識のない私にはそもそも無理)、フォルクローレの名曲集としてコレクションに残すだけの価値は認めているから70点は確保している。(もちろん手放したりはしない。)ところでトラック6 "Romance de viento y quena" の悠然たる歩みによる出だしには何となく聞き覚えがあった。私の記憶に間違いがなければ(結構怪しいが)、これも「駒ヶ根人達」のレパートリーだったはずである。たしか(姓の五十音順で班が構成されていたため)同じ班に所属し一緒にパラグアイに行った静岡出身のIさんが一番のお気に入り曲だと語っていたような。たしかに冒頭部分の格調高さは当盤収録中で群を抜いている。そこで彼の耳の正確さに敬意を表しつつ、この曲を理由に5点を上乗せすることにした。よって75点。

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