ハンス・シュミット=イッセルシュテット

交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
交響曲第7番ホ長調
(いずれも北ドイツ放送交響楽団)

 シュミット=イッセルシュテットは比較的古くから演奏を知っていた指揮者である。(なお、「イッセルシュテット」と省略しない理由はロペス=コボスの目次ページで述べるつもり。)ベートーヴェンの交響曲は(モーツァルトやブラームス同様に)CDを買わずに済ませていた(同じ頃にクラシックを聴き始めた同級生から借りて聴いていた)ということについては既に「クラシック遍歴」ページなどに記した。彼はまずカラヤン&BPOの56番(82年盤)とバーンスタイン&VPOの3番を買い、続いてともにLONDONレーベルの14番と27番に手を出したと記憶している。当時は国内盤の一部がキングレコードから出ており、それらは確か初発盤で定価3000円だったはずだが、DG(ポリドール)の通常盤(3500円)より安かったのである。オケはVPO、そして指揮者はいうまでもなくシュミット=イッセルシュテットであった。が、その頃はまだ12番の良さがちっとも解っておらず、47番もクライバーによる華のある演奏がよくFMで流されていたこともあり、地味で退屈なだけとしか思えなかった。それどころか、キングという弱小レーベル所属という理由で「落ちこぼれ指揮者」の1人に過ぎないという勘違いすらしていたかもしれない。そういうアホな認識のままで何年も過ぎた。
 しかしながら、ネット上では今月採り上げたコンヴィチュニー(&ゲヴァントハウス管)と並んでベートーヴェン交響曲全集の評価は非常に高く、某掲示板の「究極ベト全スレ」でも常に名前が挙げられるほどの人気ぶりである。(一方、宇野功芳のように8番に限って「名盤」に推す評論家こそ少なくないが、せいぜい「小曲に向いている指揮者」扱いであり、他の曲までも絶賛しているような評論は目にしたことがない。)最近注目したのは「ウィーン・フィルの美しい音色と伝統的な演奏法」を賞賛する意見が数多く見られたことである。それらは大幅なメンバー交代によって弦楽器群の音色がガラッと変わってしまった70年代以降の演奏からはもはや聞かれないものだという。それを読んだ私はバーンスタインとシュミット=イッセルシュテットの全集を聴き比べたが、確かに全く別のオケと錯覚するほど艶が違うように聞こえた。それと同時に目を引いたのが、ベームとシュミット=イッセルシュテットの相違について述べた書き込みである。戦後(特に50〜70年代にわたって)最も数多く指揮台に上がっていた前者の大らかな演奏と異なり、後者からは「細かいところを揃えてくるような、緻密な印象」を受けるというコメントがあり、それに「S=イッセルシュテットの演奏は、一見オケの自由に任せてるように見えて実は裏でギリギリと手綱を絞っているのではないかと思いますよ。EMIやTAHRAで出てるNDRとの演奏を聴いてそう思いました。」というレスが付いた。
 さて、この指揮者によるブルックナー音源として現存するのは全てNDRとの共演のようである。(私が持っている47番の他にも52年録音の9番が残されているらしいが未聴である。VPOのも聴いてみたいが無いのなら仕方がない。)そして、それらを聴いて私が真っ先に感じたのが前段落で触れた「緻密」であった。が、同じオケでもヴァントが振った場合とは微妙に違っているようでもある。それをディスク評ページに書くつもりであるが、どうなることやら。(ちなみにブル2種およびベートーヴェンの交響曲&協奏曲全集ボックス以外は1枚も持っていない。)

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