交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
ハルトムート・ヘンヒェン指揮オランダ・フィルハーモニー管弦楽団
1989
DENON (Laserlight) COCO-78032

 Laserlight原盤による1000円廉価盤の中にブルックナーが数点含まれていることは知っていたが完全に無視していた。古いモノラル録音だと思い込んでいたのである。(それゆえベイヌム&ACOの5789番にも手は出さない。名演の声が小さくないにもかかわらず。)ところがところが、私はこのヘンヒェンという指揮者をケンペンとゴッチャにしていたのであった。(ともにオランダ人で同国のオケを振っていたので、記憶回路が混線してしまったのだろうか? なおケンペンはオランダ放送フィルとの4番録音を残している。)今年(2008年)yahoo! オークションに当盤が出品された際にようやく誤りに気が付いた。ただし格安出品(100円だったっけ?)に対しあまりにもケチケチ戦法で挑んだためアッサリ敗退となった。ちなみに尼損の中古市場では悪徳業者が法外な値段を付けているのを時に見かける。一方、米尼では5ドル以下の納得価格ではあるが送料を加えたら1000円を超えてしまう。結局、3月の関東出張時に都内の中古屋で当盤と9番とを入手した。それぞれ525円と315円だったと思う。同じ店に7番もあったが、それほど安くはなかったので見送った。
 この3番であるが、出だしからどことなくシャキッとしていない。モタモタした足取りのまま最初のクライマックスに突入してしまう。以降もそんな箇所が頻出。(完成度ではズヴェーデン&オランダ放送フィルの4番より断然劣る。指揮者の統率力とオケの技量のどちらの責任が大きいのかまでは判らないが・・・・)ただし印象は決して悪くなかった。3番ではヴァントとかギーレンのようなキチッキチッとした演奏の方を好む私ゆえ、これは意外だったが、要は縦の線が微妙にずれていることがスケール感の表出という幸運な結果を生んでいるためと考えられる。このあたりはクナや朝比奈の得意技でもあるが、音の良さで前者を、精度で後者を上回っている。パートバランスはブラス偏重気味ではあるものの、明るい音色で爽やかに吹き鳴らしているため却って聴き心地は良かった。軽快テンポの後半楽章は上出来である。これは紛れもなく掘り出し物の1枚。

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交響曲第9番ニ短調
ハルトムート・ヘンヒェン指揮オランダ・フィルハーモニー管弦楽団
90/02/06〜11
DENON (Laserlight) COCO-78331

 こっちはあかんなあ。9番でここまで生ぬるいと聴く気が失せてくる。宇宙創造という重大イベントを扱った曲なのに決めるべき所が決まらないのは痛い。「CDジャーナル」データベースのコメント「デジタルの新録音のライヴが千円ということで,歓迎されるべきCDであろうが,内容的には少し物足りない。ヘンヒェン&オランダ・フィルのこの演奏は,表現やリズムに厳しさがあまり感じられず,オーケストラの美質も今一つというところだ。」に付け加えたいこともない。せめて暴れ回ってくれていたら(私の好みではないにせよ)「爆演系」として評価することも不可能ではなかったのだが・・・・・ティンパニが孤軍奮闘するも力強さが足りていない。しかしながら特に気に障るような解釈が聞かれた訳ではないから、3番よりかなり落ちるとはいえ最悪の評価を下すまでには至らならなかった。60点。(おっと、ここはポピュラー音楽のページではなかった。)

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