レナード・バーンスタイン

交響曲第9番ニ短調
 ニューヨーク・フィルハーモニック
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 バーンスタインもCBS所属だったから、「音のカタログ」によってカラヤンよりずっと早くから親しんでいた指揮者である。(そういえば、あるテレビドラマで林隆三扮する寿司屋の親方が自室にカラヤンとバーンスタインの特大ポスターを貼っているのを見て、「やはり現役指揮者ではこの2人が別格の存在なんだな」と思ったことを憶えている。とはいえ、彼ら2人の仲があまり良くないこと、およびその原因の1つがバーンスタインのベルリン・フィル客演時におけるカラヤンのリハーサル妨害にあることを私は何かの書物から知っていた。また、「音楽の友」にはカラヤンのマネージャーの回想録として、こんなエピソードが紹介されていた。カラヤンが演奏旅行で来ていた都市からそれほど遠くない場所にバーンスタインが保養のために滞在していることを知った彼は、何とかして2人を引き合わせようと画策する。「カラヤンは私と会うのを嫌がるだろう。私はそれが嫌だ。」と渋るバーンスタインを説得し、何とか楽屋に連れ込むことに成功した。ところが、しばらくして入ってきたカラヤンは部屋にいる人間が誰だか判ると一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに笑顔に変わって「ハロー」と挨拶してバーンスタインに近寄り、彼の頬にキスをする。ところが、その直後に回れ右をして出ていってしまったそうだ。こうして両者の最初で最後の顔合わせはわずか数十秒で終わったという話である。)最初の「ベスト・クラシック100」シリーズには10枚が採用されており、看板スターに相応しい待遇を受けていたといえる。多少の入れ替わりがあるが次のシリーズも同数だった。ところが、私が持っているCBSソニーのディスクは意外なほど少なく、そのシリーズではビゼーの管弦楽曲集のみ。(とはいえ、ガーシュインとマーチ集はレンタル屋から借りてコピーテープで聴いていた。)他でも後述するマーラーとブルックナーを除けば、コープランド作品集と「オーケストラ音楽の楽しみI」と題された「軽騎兵」「天国と地獄」などの序曲集ぐらいしか見当たらない。おっと、F=ディースカウのマーラー歌曲集でピアニストを務めているのを忘れるところだった。ということで、枚数では黄色レーベルの方が圧倒的に多い。最初は値段が高いため敬遠していたが、中古屋の品揃えが豊富になり売値が下がるとともに加速度的に増えていった。やはり主力は交響曲で、最初に入手したベートーヴェンの全集に加え、ブラームスの134番(2番は第1楽章にどうしても耐えられない加速があるため売却)、チャイコフスキー後期三大、シベリウス2番、ショスタコ17番が棚に並んでいる。ただし、それらを十分に堪能できたかといえば必ずしもそうではない。後に聴き比べに熱中するようになったベトは、他指揮者ほど強烈な個性がないように感じられたため次第に聴かなくなった。また、逆に自己流に走りすぎているのが最初から気に障っていたブラ(特に2番は許容量をオーバー)も今では別になくとも困らないような気がする。最も愛聴しているのは許光俊の「世界最高のクラシック」に触発されて買ったチャイコである。他ジャンルは極めて少ないが、真っ先に挙げるべきは自作自演盤「ウエスト・サイド・ストーリー」、そして今度は指揮者としてだからマーラー歌曲集(ハンプソン独唱)も忘れずに済んだ。
 マーラーといえばクラシック開眼の直接的原因となった作曲家の1人であるが、中古が安かったため124789番のNYPとの旧盤をかなり早い時期に揃え、後に新全集録音259番新盤が加わった。(残る4曲のうち、36番はレーグナー、10番はラトル、そして大地はクレンペラーである。)どれも非常に気に入っているため買い換えを検討したことは一度もない。(ブルックナーと異なり基本的に「1曲1種」の方針を守っており、今でも3種類持っている曲はない。)そしてもう一方の恩人ブルックナーであるが、ディスク蒐集プロジェクトの開始当初はバーンスタイン盤には全く注目していなかった。(録音が存在することは知っていたけれども購入対象からは漏れていた。)9番を新旧両盤とも入手することになったのは惰性(何となく)に過ぎない。

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