ポピュラー音楽のページ(方針その他はこちら、表記についてはこちら)
1.スペイン語圏の音楽
2.ポルトガル語圏の音楽
3.その他の地域の音楽
2006年8月記
2年以上に及んだブルックナーのディスク評執筆は、正直なところ残り100種類を切った辺りからが辛かった。(マラソンに喩えれば35km過ぎだろうか?)文面にもそれが滲み出ているかもしれない。さほど思い入れのない指揮者が残ったということもあるが、それ以上に既に執筆したディスクと同様のスタイルによる演奏にも「何か違ったことを書かなければ」という強迫観念に苦しめられたのである。さらに散々使い回して「決まり文句」「常套句」と化した言葉を避けようにも他に何も浮かばないこと(言うまでもなく当方の語彙不足が原因)も悩みの種となり、結局なんやかんやで行き詰まってしまったのである。(強烈な個性が感じられる演奏ではさほど苦しまなかったが・・・・)マンネリに堕している一部評論家を散々扱き下ろしてきたけれど、彼らの苦労もちょっぴり理解できるようになった。そういえば、かつて某掲示板「クラ板」に「あたしとどっちが大事なの!」という題のスレッドがあり、あまりのクラヲタぶりにとうとう業を煮やした妻から「ベートーヴェンなんか1枚あれば十分でしょ!」となじられた、という投稿を読んだことがある。その時は思わず笑ってしまったけれども、確かに「些細な違いを論ってどこが面白いんだろう?」と考えるのが世間一般には違いないと今更ながら思う。そして、そういうのを文字にするのが決して容易なことではないと身に滲みて解った。
という訳で、「ブルックナーが一区切り付いたから、次はベートーヴェンあるいはブラームス?」という大方の(誰の?)予想を覆し、これから暫くはクラシック以外の音楽を扱うことにした。なお、当初は「ラテン音楽のページ」とするつもりであったが、アングロサクソンにもゲルマンにも、そしてモンゴロイド(日本人や米大陸の先住民など)にも採り上げたいミュージシャンが結構いると気が付いたため、タイトルをこのように設定することにした。
それにしても「ポピュラー音楽」というのはよく分からんカテゴリーである。(ついでながら、「ワールドミュージック」はもっと意味不明だ。)私がその呼び名を知ったのは中学生のはずだが、それに属していない音楽がいかにも不人気であるかのような言い方には当時から疑問を抱いていた。そこでja.wikipedia.orgに行ってみたら3通りの定義が載っていた。が、どれも私の考えているものとは少しずつ違っているようである。そのうち最も広義なのは「大衆音楽として」であり、「ある一部の層で評価の高い音楽ではなく、一般大衆に受け入れられている音楽」とされ、「売れていれば映画音楽でも、ジャズでも、演歌でもポピュラー音楽のなかに分類される。」とある。けれどもジャズは入れたくない。私の考える「ジャズ」というのは、トコトンまで突き詰めようとして深みにはまった演奏者の人生を破滅させてしまうほどの危うさを持った音楽のことであるし、マニアックという点でも同工異曲の些細な違いを愉しむクラシックとは双璧をなすように思われる。要は「売れさえすれば何でもアリ」的な音楽からはほど遠いということである。(シャイー&RCOによる「ショスタコーヴィチ:ジャズ音楽集」を持っているが、あれに収められている「ジャズ組曲」や「2人でお茶を」などは確かに「ポピュラー音楽」に違いない。しかしながら、今やそれらを「ジャズ」と認識する人はほとんどいないのではないか? あるブログに「もうすでにジャズはポピュラー音楽では決してなくなっていたのでした」「一部のファンだけが嗜む、社会的意味合いと同時代性を失った音楽」とあったが、その点でも「大衆音楽」よりクラシックに近いのは明らかである。)次の「軽音楽として」では「古典音楽や伝統音楽でない、つまり、なんらかの厳格な決め事をもっていない音楽としてのジャンル」とあるから、これだと世界各地の民族音楽(ファド、サンバ、タンゴ、ボサノヴァ、あるいはアンデス諸国の民族音楽=いわゆる「フォルクローレ」、等々)が含まれるのか否かが判然としないのが大いに不満だ。(ちなみに、これらの多くはもはや本国では日常的に聴かれることはないという理由で、「大衆音楽」にすら該当しないということになってしまうかもしれない。これはヤバい。)最後の「ポップ・ミュージック(ポップス)として」は「ソフトでノリのいい音楽である」とあり、私が常日頃から嫌っている音楽そのものを指しているため論外。
よって、ロック、ポップス、民族音楽、ワールドミュージックなどに分類されるものを私の独断によって「ポピュラー音楽」とし、さらに使用言語や産地(?)によって上のように3つに分けることにした。(単刀直入に「○○語の音楽」としなかったのは同一人物が複数言語を使い分けているケースが存在するからである。また、ネイティヴ・ランゲージ以外で歌うミュージシャンを考慮すると、必ずしも出身地域別の振り分けにはならないだろうと予測している。)なお、ブルックナーのページのように最初から指揮者一覧を出してしまうのではなく、作成したミュージシャンの名前をその都度載せていくことにした。これにより次に誰が登場するのかが全く判らず楽しみも倍増するという効果が期待できる(訳ないか。)
最後になるが、ジャズのCD蒐集も(半分近くがクラシックの編曲ものだが)それなりの枚数には上っているので、いつの日か継ぎ足しするかもしれない。あるいは「芸術音楽のページ」を立てて、さらにクラシックとジャズとに細分すべきだろうか?(以下も参照されたし。)
追記
少し前に買った岡田暁生著「近代音楽史」(中公新書)には「『クラシック』と『ポピュラー』は地続きであって、決して世間で思われているほど対立的なものではない」とあったが、「ポピュラー音楽の大半は、特に旋律構造や和声や楽器の点で、一九世紀のロマン派音楽をほとんどそのまま踏襲しているといっても過言ではない」「『感動させる音楽としてのロマン派」の延長線上にあるのが、ポピュラー音楽なのである」という説明には納得がいった。ついでながら、この本ではジャズについても論じられている。1950〜60年代のモダン・ジャズは「ほとんど『作品』と呼んでもさしつかえない構成の緻密さ、そして複雑かつ独創的な音システムの飽くなき探求の点で、西洋芸術音楽と同様の性格を示している」とあったが、その後は(20世紀初頭において西洋芸術音楽に生じたのと同じく)「先鋭的な前衛路線(フリー・ジャズ)とオーソドックスな娯楽路線とに分裂してしまった」とあるから、どのように扱って良いのかが正直なところ分からなくなってきた。結局のところ、ジャンルにこだわったりするのは、あまり賢くない人間のすることなのかもしれない。
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