表記について
アーティスト名も曲名も原語表記を原則にしたかったのであるが、英語以外の欧州言語で使われるアクセント記号や変音記号付き母音、および一部の子音がネックになる。既に作成したページ同様、ISO-8859-1定義による特殊フォント記述法を用いれば良いのだが、何せ当サイトで採り上げる予定の歌手はラテン系が圧倒的に多いため、煩雑な作業を頻繁に強いられると考えただけでウンザリしてしまった。そこで本文中では不承不承ながら日本語で表記することとした。(・・・・と一度は書いたけれども、「イパネマの娘」ぐらい有名なものは別として曲名はなるべく原語で綴ることにした。輸入盤は当然として国内盤も同じ扱いとする。アホな邦題が付けられている曲を日頃から不憫に感じているためである。 "Macarena" や "Aranjuez" にわざわざ「恋の」を付けたがる人間のセンスが知れない。また、最近では原題をそのまま仮名書きにするケースが増加する傾向にあるようだが、「アイヴ・ガット・マイ・ラヴ・トゥ・キープ・ミー・ウォーム」みたいに長ったらしくなると見た目が間抜けっぽいので大嫌いだ。)
とはいえ、外国語をなるべく発音に近くなるようにカタカナ書きするのは結構難しいことである。とりあえずアクセントのある音節には長音記号(ー)を付けることにした。たとえばスペイン語圏の音楽で採り上げる予定の "Mecano" については、「メカノ」「メカーノ」の2種類をネット上で見かけるが、当サイトでは後者を使う。前者だと [mecano] と第1音節が強く読まれる危険があると判断したからである。(関西人には正しく [mecano] と読んでもらえるかもしれないが・・・・だからといって「関西の方が国際的だ」などと暴論を唱えてはいけない。ついでながら、私の姓も当地では [izumi] で、標準語あるいは東京式アクセントとは異なる。学生&院生時代を送った名古屋も東に倣えスタイルだったため、トータル15年という在住期間の最後まで [izumi] と呼びかけられることに対して違和感が拭えなかった。)その弊害の最たるものは女性名の「マリア」(María)であろう。“i”にアクセントがあるから当然「マリア」としなければならない。ところが、実際には「マリア」のように発音されることが圧倒的に多いように思う。英語の "Mary" とは違うのである。(ちなみに、教育番組 "Sesame Street" はその点に抜かりなく、プエルトリコから米合衆国に移住してきた修理屋一家の主婦名をちゃんと西語通りに呼んでいた。NHK教育テレビが放送しなくなってから久しいが、たしか日本語の副音声も同様だったと記憶している。)誤読対策として本ページのように強く読む音節をボールドにするのが確実だし、実行不可能でもないが、いちいちタグを付けていくのは結構骨が折れるし、ブラウザ等の条件次第で太字による強調がハッキリしない恐れもある。そこで代替手段として「マリーア」のように記す。既に「エスパーニャ」(España)などは定着している感があるが、このように記せば普通にカタカナ読みしたとしても実際の発音に(あくまで「それなりに」だが)近くなるからである。他には「イレアル」に在籍しているのが気に食わないとはいうものの、決して嫌いではない「スペインサッカー界の至宝」こと"Raúl González" も同様だ。実況でアナウンサーが「ラウル」を連呼していると耳障りで仕方がない。これに対し、スポーツ雑誌「Number」のサッカー特集にて、誰だったか憶えていないけれども「ラウール」と表記しているのを目にしたことがある。そのライターもテレビ観戦で私と同じイライラを感じていたのだろうか? ここで気が付いたことがある。「ゴンサーレス」には違和感がなかったりする、というよりむしろ伸ばした方が良いような気がするけれども、"Fernández" あるいは "Fernandes" を「フェルナーンデス」などと書こうものなら却ってマヌケな印象を与えてしまう。これには愕然とした。一貫性の欠如は甚だ不満ではあるものの、どうやら臨機応変に対応するしかないようだ。(←ダラダラ書いてきて結局それかい!)
また、西語や葡語はそれで何とかなるかもしれないが、仏語や伊語ではもっと困るような気もしてきた。そういえば昨年(2005年)11月に横浜のKさんのブログで "Beaujolais Nouveau" が話題になった際、「ボージョレ」と「ボジョレー」が乱立したし、「ヌーボー」「ヌーヴォ」のように(v音の表記に加えて)最後を伸ばすか伸ばさないかについて混乱が生じてしまった。今思うに罵り合いがエスカレートしてブログが閉鎖に追い込まれなかったのが不思議なくらいである。それはくだらんジョークとしても、仏語ではアクセントがあまり強くないことが全ての元凶である。伊語も似たり寄ったりで、NHKのテレビ講座の語彙コーナーでは、同じ単語の強勢位置が1度目と2度目で異なっているように聞こえたのは参った。それも頻繁だったので「どっちなんや、はっきりせい!」と画面に怒りをぶちまけたことも一度や二度ではない。私が両言語の学習にイマイチ身が入らないのも多分そのせいだ。などと暴走モードに入る前に止めることにするが、表記の原則が曖昧にならざるを得ないのは大いに不満である。
母音ばっかりで子音のことを忘れるところだったが、ほとんどは問題なく対応できると思う。先にも出てきたv音だが、bと同一と考えても構わない西語ではバ行、それ以外ではヴァ行を当てる。西語といえば閉音節(子音で終わる音節)は少々厄介で、"Madrid" は「マドリード」「マドリッド」に加えて最後の“d”をほとんど発音しないことに配慮した「マドリー」という表記も見かける。(先述したスポーツ雑誌などサッカー関係の記事での使用が増えているようだ。)ここは必ずしも正確ではないかもしれないけれども「マドリード」を選びたい。(撥音使用はちょっと違うように思うし、伸ばしっ放しの「リー」というのも投げ遣りっぽくてヤだ。)日本語の「ド」のような明確な音でないことを示すため「マドリードゥ」とでも書けば少しはマシかもしれないが、字面に抵抗があるため断念する。語末だけでなく、二重子音や三重子音もカタカナ書きだと全て有声音となってしまうが大目に見てもらいたい。また、ケース・バイ・ケース(気紛れ)で違う書き方をする可能性もあるが、どうせ上でファジー宣言をしてしまったのだから、あとは程度の問題に過ぎない(と開き直る。)
最後に例外規定。既に国内盤が発売され、ある程度定着したと思われる日本語表記については、明らかな誤りと認めた場合を除いて尊重することにした。やはり初っ端で触れる "Madredeus" は、心中では「マドレデウス」ではなく「マードレデウス」としたいのだが自粛する。一方、"Mocedades" はネット検索すると圧倒的に「モセダデス」の件数の方が多いけれども、私自身がしっくり来る「モセダーデス」を採る。我が国での知名度は極めて低いゆえ、クレームを付けられることはまずないだろう。
今思い出したが "saudade"(郷愁)はポルトガル音楽の場合は「サウダーデ」、ブラジル音楽なら「サウダージ」としたい。同一言語ながら地域間での発音の差異を重視したためである。ちなみにブラジル式発音は「サウダーヂ」の方がより近いかもしれない。ところが、「ジ」と「ヂ」、「ズ」と「ヅ」の問題は日本語でも大変厄介な問題であることに気が付いた。「○○ずつ」か「○○づつ」かで論争の種になったりする。現代仮名遣いには語源を無視したものが結構多く、「力尽く」「地面」「頭痛」は「ちからずく」「じめん」「ずつう」が本則であると何度言われても納得できない。(ここでまたしても私の姓であるが、「水が出づる所」が語源なので元は「つ」に濁点だったらしい。補足すると、現在は「出ずる」と書く方が主流だが本来はダ行下二段活用動詞「出づ」の連体形「出づる」が正しい。)このままだと泥沼に足を突っんで抜けられなくなる予感がしてきたので未解決のまま逃げる。
退散
追記
「given name + family name」式の歌手名について、当サイトでは原則として(兄弟姉妹など同姓の別人を区別するような場合を除き)後者のみを使用する。(両方記載はなるべく初回のみに限定する。)例えば "Teresa Salgueiro" なら「サルゲイロ」である。これまでKさんのサイトでは親しみを込めて「テレーザ」と呼んできたけれど、特定歌手のみファーストネームを使うというのでは依怙贔屓と受け取られかねない。ここは涙を飲んで(?)ファミリーネームに統一することに決めたという次第である。ところが、今になって "Selena" や "Thalía" のように芸名が姓なのか名なのかが判然としないソロ歌手が少なくないことに気が付いた。それでもネット上から本名の "Selena Quintanilla Pérez" や "Ariadna Thalía Sodi Miranda" を知ることは不可能ではない。が、いちいち検索するのは面倒だし、プライベートをほじくり出しているようで気がとがめなくもない。やはり慎み深さをモットーとする当サイトとしては(←どこが?)、あくまで公表されている分のカタカナ表記に留めるべきであろうと判断した。
附則(2007年6月28日施行):ただし本来フルネームを名乗っている歌手が国内レーベルの独断により一部のみ記載されることになった場合は、これを不当な変更と見なし、抗議の意を表明するためにも追従を断固として拒否する。(糞東芝EMIがまたしても愚行を重ねたため急遽書き加えねばならなくなった。→2007年6月30日追記:同日朝刊に「東芝EMIは、今日からEMIミュージック・ジャパンに社名が変わります」という広告が載った。下には「アーティストたちの音楽のすばらしさは、変わりません」との一文も。そんなことはわかっとる。改めるべきはオマエんとこの腐れ体質やろがぁ!)
追記2
遅ればせながら原語での表記についても一応ことわっておく。私が本業で引用文献を載せる場合のタイトル表記法、つまり「単行本では各単語の頭を大文字(ただし2番目以降に置かれた冠詞と前置詞は除く)、原著論文では冒頭のみ大文字」という決まり(投稿規定)をディスク名(例:O Espírito da Paz)と曲名(例:El color de tu mirada)にそれぞれ適用することとした。もちろん人名や地名等の固有名詞はこの限りではないし、一部に "ANA|JOSÉ|NACHO" のような例外もある。
一方、アーティスト名については少し迷った。個人は基本的に「姓・名とも頭のみ大文字」で問題ないだろうが、グループ名はそう単純にはいかない。例えばメカーノは "MECANO" の使用が圧倒的に多い(そう記すよう公に指定しているのだろうか?)けれども、「モセダーデス」は "Mocedades" の方がやや優勢に思われる。マドレデウスは "Madredeus" と "MADREDEUS" のどっちにしていいか正直わからない。(アルバムジャケットを見ると "Os Dias Da MadreDeus" 以外は全部大文字のようだが。)が、ここは割り切って「語頭のみ大文字」(正確にはCDタイトルと同じスタイル)に統一することにした。結局は私の美意識の問題に過ぎないのだが、全部大文字だと何となく窮屈に感じてしまうからである。
追記3
BEGINやTHE BOOMは公式サイト等でも全て大文字で書かれているようだが、短い単語の場合は寸詰まり感がない。むしろ上の原則を適用して "Begin" や The Boom" と書くと何ともショボくなってしまう。ということで、アーティスト名の表記についても臨機応変(行き当たりばったり)でいくことにした。
追記4
ポピュラー音楽のページを執筆するようになってから "live"、"version"、"cover" といった単語の使用頻度が増しているが、その日の気分によって日本語表記がバ行になったりヴァ行になったりしていることに思い当たった。(なお「ヴィヴラート」は字面に抵抗があるため使う気になれない。「ヴィヴァルディ」は平気なので慣れの問題かもしれないが。)これは偏に私のチャランポランな性格に発しているのだが、どうか大目に見ていただきたい。ただし「ライヴ・バージョン」のように一貫性を完全に失したチャンポンは絶対に避けるつもりである。