交響曲第9番ニ短調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団
93/03/07〜09
BMG (RCA) BVCC-37250

 第1楽章2分42秒からのファンファーレ(第9番目次ページ下の駄長文にて「ビッグバン」に喩えた箇所)において音が全く濁らない。迫力だけのベルリン・フィル盤とは雲泥の差である。(ただしそれには一長一短があるが・・・・・BPO盤の項で触れる。)また、最初から最後までアンサンブルの乱れはなく、「この盤を買い直した甲斐があった」とホッとしたことを憶えている。これも7番とともにヴァントの懐石料理としては最高傑作であろう。この演奏に対して「音の密度が小さい」という感想をどこかで目にしたように思う。かくいう私もベルリン・フィルとの5番と4番を堪能した後しばらくは物足りなさを覚えないでもなかった。私が所有しているヴァントの9番中、この盤が最も演奏時間が長く、テンポの遅いことがやや薄味に感じられる原因の1つなのだろうと思う。しかし、7番と同じく懐石料理に濃厚さや油っこさを求めてはいけない。せっかくいい昆布で取った出汁にバターやコンソメを加えたら味が濁って台なしである。
 「こんな『名盤』はいらない!」で許光俊はヴァントとミュンヘン・フィルによる9番の海賊盤(CD-R)の最後の「比類がない」数分間について「この曲の最後の平安や静寂を真に平安に静寂に演奏した最高の例の一つで、空のかなたに消えていくような趣すらある」と評しているが、このBMG正規盤でもその趣は十分に感じられると思う。(正規盤の方がはるかに入手が容易である。何せMPO盤は高い。)一方、「クラシック名盤ほめ殺し」で鈴木淳史が触れていた「何者かのマイクへの接触音」は未だにどこで聞けるのかわからない。

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