交響曲第9番ニ短調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団(88)
88/06/24〜25
BMG (RCA) BVCC-38166〜17

 8番よりも残響が覆い被さってくる度合いが大きいように思う。ヴァントもやりにくかったに違いない。
 以前CDジャーナルに「徹底聴きまくりシリーズ」という平林直哉(および交替でもう1人)の連載があった。ある曲について現役盤、廃盤を問わず可能な限り国内盤を聴いてコメントおよび4段階(◎○△および無印)の評価を付けるというものである。平林はブルックナー9番の回でヴァントの93年盤に◎を付けたが、この88年盤は「残響過多で演奏自体を評価できない」というコメントとともに無印であった。気持ちは解るがプロの仕事としては???だと思った。ヒストリカル録音の評価もしている彼が音質を理由に演奏の評価を放棄してはいけない。まだしも潔く「残響が好ましくない」とでも書くべきではなかったか? とはいえ、私もこの演奏は正直なところ好んで聴きたいとは思わない。ただし、第1楽章コーダでは「神の歓喜の踊り」(9番目次ページ参照)に宇宙全体が共鳴しているような凄まじさで、ここは聞き物である。特に最後の「ダーン」が鳴り終わった後も数秒間残響が聞こえるところなどは、もし生で聴いたら大感激したかもしれない。なお、不思議なことに車の中で聴いた時だけはそれほど不快ではなかった。いつかやってみたいと思っているのだが、銭湯か温泉の大浴場にラジカセを持ち込んで、大音量でこのディスクをかけたらどんな風に聞こえるだろうか?
 ちなみに私が最初に買ったのはBVCC-8889〜90である。新マスタリングによる2枚組(2002年1月発売)は残響が控え目で聞きやすいというコメントをネット上で読んだため、新たにこの再発盤を買い直したが確かに改善されている。たぶん他でも書いているはずだが、24bit/96kHzの効果は小さくないようである。

9番のページ   ヴァントのページ