交響曲第9番ニ短調
ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
98/04/21
sardana sacd-105/6

>  また、ヴァントの9番には98年4月にミュンヘン・フィル客演時のもの
> があり、これも超名演で同社から海賊盤が出ているとのこと。愛好家の意見
> を集めてみると、5種類あるディスクのうちミュンヘン盤かその前の北ドイ
> ツ放送響盤(2種類存在し、録音の違いで好みが別れる)をトップに挙げて
> いる人が多く、一部に最初のケルン放送響盤への愛着を示す人もいました。
> しかし、昨年アカデミー賞を受賞したBPO盤(ミュンヘン盤の5ヶ月後)
> は人気がありませんでした。「今のヴァントならもっと凄い演奏ができたは
> ず」という意見もありました。こういう評価を下していた人は恐らく若い人
> だと思われます。一方、褒めていたのは吉田氏とか宇野氏といった老人達。
> 僕が聴いてもイマイチしっくりこなかったのも無理もないことで、やはり年
> 齢を重ねるにつれて良いと思うようになるのかなという気がします。(00/03/13)
(後註:「同社」とはヴァントの海賊盤CD-Rで一財産を築いたかもしれない
     Sardana Recordsのことである。)

 9番の目次ページにも書いたが、このディスクは「未完成」との2枚組で本体価格4600円、消費税と諸経費(送料+振込手数料)を入れると5000円以上という時代錯誤的高価格になってしまう。なので決して人には薦めない。もし正規盤が適正価格で出たら大ベスト・セラーになるであろう。(追記:2004年7月にMEMORIESというレーベルから同内容を収録したらしきME-1001 (2CD) が発売された。やはり海賊盤だが通常CDだけに「青裏」より寿命が長いと期待されるし、価格も3500〜3600円程度と多少安くなっている。音質についてもsardanaと比べて特に悪いというネット評は目にしていない。)既にこの演奏について許や鈴木が書いたこと(例えばメンバーが積極的に弾いているなど)に付け加えることはほとんどない。あまりに凄くあまりに完璧なのだが、1箇所だけ挙げると第1楽章21分30秒からコーダ直前までの盛り上げ方が実に見事である。特に22分44秒からの数秒間の切々とした響きは感動的で、胸の奥から思わずこみ上げてくるものがあった。
 ところで、当盤もミュンヘン・フィルの根城であるガスタイク・フィルハーモニーでの演奏会を収録したと思われる。ご存知のように、このホールはヘラクレス・ザールに代わる本拠地として建てられたが、落成直後に客演したバーンスタインが怒りのあまり

 鳴らぬなら
 燃やしてしまえ
 ガスタンク(←あぶない)

と詠んだとか詠まなかったとか伝えられているほど音響の悪いホールとして有名である。けれども、このディスクでは音質に対する不満は全く感じない。ヨッフム&MPOの9番(METEOR)も同様で、しかも当盤と全く同じくメタリックで艶々した感じの音質である。(ただしヨッフムの9番はどうしても我慢できない点がある。必ず書く。)ホールの良し悪しと録音の音質には必ずしも相関がないのであろうか? 不思議なことである。さらに不思議なことに、チェリビダッケでは艶の感じられるものと感じられないものがある。(レーベルの違いだけでは説明しきれない。)ケンペの録音は古いせいもあるだろうがむしろ地味な感じである。結局「ミュンヘン・フィルの音」ってなんなんだ? と、訳がわかんないまま終了。

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