交響曲第9番ニ短調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団
2000年11月14日
来日公演の映像(NHK-BS2および教育テレビ)

 許が「クラシックを聴け!」に「高齢のため来日は不可能」と書いていたのを頭から信じていたため、まさか来るとは夢にも思っていなかった。(別に彼を恨んではいない。念のため。)来日公演のことを知ったのは9月に入ってからだったと思う。(まだ某巨大掲示板サイトのことは知らなかった。)今からチケットを取るのは無理だろうと思ったし、何よりも平日に休暇を取って東京に行くのが億劫だったので、生で動くヴァントを見るのは諦めてしまった。次回こそは、と思っていたのだがその日が来ることはなかった。
 さて、NHKが放映したのは3日間の公演(11/12〜14)の最終日らしい。よろめきながら指揮台に立ったヴァントを見るのは痛々しかった。第1楽章の「インフレーション」(9番の目次ページ下参照)のヴァイオリンの刻みが他の楽器のリズムと全然合っていない。ここを聴いていたらもっと痛々しくなった。マイクを立てる位置のせいであんなにもズレたりはしない。こんな風に聞こえるのは、他にもクレンペラー&ニューフィルハーモニア盤とクーベリック&バイエルン放送響盤がある。前者はこの演奏以上に痛々しいが、後者はなぜか「なかなか味なことをやる」と思ってしまった。説明不可能なのだが、要は私の許容範囲なのであろう。「ビッグバン」の所で正面からヴァントを捉えたアングルに変わったが、ここは指揮者の凄まじい形相に圧倒された。懸命に棒を振る姿に胸を打たれた。ここに限らず凄味を感じた所は決して少なくなかった。(曲のせいもあるが、「未完成」は最初から最後まで殺気立って聞こえた。)が、9番BPO盤のページで「何かヨロヨロしているような演奏」と難じた箇所でのギクシャク感はより顕著であり、その後テンポを少し上げようとした所では立ち上がりが揃わず、アンサンブルがバラバラで崩壊寸前といった印象を受けてしまった。この演奏会はNHK教育と衛星第2放送で都合2度観たが、番組を録画したテープは涙なくして観ることができないという予感があるので、一度も再生していない。
 なお、ヴァントの名誉のために言わなければならないが、やはり超高齢のため最終日の完成度が低くなったのはやむを得ないのだろう。初日を聴いたらしき人が、某巨大掲示板のヴァントのスレッドに「ほぼ完璧」という書き込みをしていた。また、BMGから発売されたDVDは2日目の公演を収録、CDは3日間の録音を編集しているということだから、少なくとも売り物になるだけのクオリティは保っているのだろう。(私は映像ソフトには興味がない。初日の無修正CDが出たら買おうと前から思っている。)

9番のページ   ヴァントのページ