交響曲第9番ニ短調
ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・ドイツ交響楽団
93/03/20
Re! Discover RED-27

 5番BRSO盤(RED-26)の第1段落には「気長に待つ」と書いたけれど、それから2ヶ月も経たない内にYahoo! オークションで同じ出品者から入手することができた。(開始価格がかなり低かったので、私は慌てず騒がずの方針で臨んだ。1番乗りした参加者の総合評価欄(評価数は私よりも多い)を見ると、過去にブルックナーのディスク(青裏含む)を相当数落札している。競り合いにも強そうだから、これは心してかからないとやられる。そう思った私は、それなりの価格で終了日に高値更新を試みた。翌朝来てみたら嬉しいことに落札通知が入っていたが、どうやら再逆転は狙わなかったようである。実は自動入札の設定額は表示されていた「現在の価格」の約5割増しに過ぎなかったのだが、もしかすると当サイトの並々ならぬ決意表明を目にしていた先方が高騰に恐れをなし、手を引いてくれたのかもしれない。要はブラフ作戦が功を奏したという訳である。(以上、全て当方の勝手な想像による。)
 受け取った品に呆れたことが1つある。続き番号にもかかわらずRED-26とは(ジャケットやレーベル面はだいたい同じだが)ケース裏のデザインにほとんど共通点がない。当盤には例のドクロマークが欠けているし、フォントの色、種類、サイズも向こうとは悉く異なっている。背表紙の配色およびフォントもバラバラなので、棚に並べたら見苦しいこと甚だしい。ちっとあ考えろや!
 冷静さを取り戻してみれば、これはNDR93年盤の録音(03/07〜09)の直後の演奏である。それゆえ解釈に大きな違いはない。例えば第1楽章のインフレーションの入りで僅かに歩調を緩めるところなど。演奏時間についても同様。(各楽章のトラックタイムは当盤の方が若干短くなってはいるが。)気が付いたのはオケの積極性である。合いの手を入れる時でさえ金管はよく鳴っているし、ティンパニの要所での打撃も気合いが入りまくっている。たまにしか来ない指揮者であっても、また知名度はさほどでなくともメンバーから信頼と尊敬を集めていたためかもしれない。(こんな名演をお客様に実現されてしまっては常任指揮者は形無しだろう。ブルックナーを振る気をなくし、それどころか暴言を吐くのもやむを得ないという気がする。常連読者には蛇足で恐縮だが、彼はインタビューで「作曲法もアマチュア的だし、転調も子供っぽい。同じことだけを長くながく繰り返し、想像力を使わずに、だらだらと書きつづけます。聴いていてハッと立ち止まって感激するようなことが一切ないのです。同じ和声、メロディーを扱うにしてもベートーヴェンにやらせれば何十倍もよくなります。」と述べたらしい。そのクセ、最もアマチュア的であるはずの00番 (習作) のみ録音したのだから実にお笑い種だが、たぶんヤケクソの心境だったに違いない。)スケルツォの迫力はヴァントの9番録音中随一ではないか?
 ところで青裏販売業者のサイトにて「アシュケナージの研磨によって美しい音のオーケストラに変貌したが、その長所を生かした演奏」との一文を見つけたが、時にメタリックとも聞こえる輝かしい音色はミュンヘン・フィルを思わせる。一方、ブラスが炸裂する際の響きは重心がどっしり座っており、まるでベルリン・フィルのようだ。音密度や合奏力では10日ほど前のNDR盤をかなり上回っている。録音のヌケの良さでも断然上。よって総合的にもかなり高く評価できる。ただし最晩年の演奏(98年MPO盤以降)から感じられたプラスアルファ、例えば神々しさなどは伝わってこなかったから、さすがに最上位に食い込むことはできない。

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