交響曲第9番ニ短調
ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
98/09/18〜20
BMG (RCA) BVCC-34020

 9番の目次ページには、中古で入手したこのディスクが期待外れだったことが載っているが、詳しくはKさんへのメールを読んでいただきたい。

>  ところで、今回買ったヴァントのCD12枚のうち、5枚は宇野氏が解説を
> 担当しています。「ついにヴァントはここまで達した!老指揮者の至高の境
> 地」「全篇にわたって深い内省の声が聞こえる」「究極の姿」「まさに神の
> ような進歩の跡」など手放しの褒めようです。それらの評価には概ね同意し
> ます。ただし、今年リリースされてあちこちで絶賛されたBPOとのブルッ
> クナー9番(ヴァント86歳時の1998年録音)は、氏の敬愛するシューリヒ
> ト&VPO盤に匹敵する名演と新聞に書いていましたが、正直なところ僕
> は???でした。
>  僕の感想は、何かヨロヨロしているような演奏に聞こえたということです。
> (宇野氏は「微妙なテンポの動かし方は老練そのもの」と評価していますが、
> ついていけんなぁ!)前にテレビで観た朝比奈&シカゴ響の5番と同じ印象
> です。金管が弦にやや遅れて出てくるので、ずれているという感じもしまし
> た。それらの傾向は遅い部分で顕著でした。もしかするとヴァントの指揮の
> せいではなく、ホールの音響か録音のせいかもしれません。また客演指揮の
> ため、北ドイツ放送響ほどには完全に呼吸が合わないのかもしれません。た
> だ僕にはブルックナー晩年の澄み切った境地は、BPOの重い響きとは相性が
> 悪いのではないかとも考えています。(5番や昨年アカデミー賞を受賞した
> 4番は最高でしたが・・・・)このコンビでは96年に録音された8番がま
> だ発売されていませんが、出ても購入は見合わせるかもしれません。オペラ
> 歌手は売れっ子になる直前が食べ頃などと言われるそうですが、指揮者につ
> いても皆が巨匠扱いで絶賛するようになった時にはすでに旬を過ぎてしまっ
> ているのかもしれません(ブーレーズがそのよい例)。
>  ということで、9番は後から買った北ドイツ放送響との旧盤(「ベスト
> 100」)の方が気に入っていますが、新盤も手放さずに取っておきます。年
> 齢を加えたら良さが解るかもしれませんから。(吉田秀和氏も朝日新聞で褒
> めていました。)ただ新盤に共感するようになるとしたら、それは深みが解
> るようになることと感性が鈍ることの一体どちらなのかを考えると、手放し
> には喜べないような気がします。(99/12/24)

 2004年4月現在に至るまでこの演奏の良さが解らないということは、私はまだ若い(青い)ためだろうと自分に都合良く解釈している。冗談は措くとしても、この演奏でまあ良いと思うのは「ビッグバン」を表現した第1楽章の第1主題ファンファーレ(2分35秒)ぐらいである。「私の再生装置」ページにて、BOSEのAW-1について「ベルリン・フィルの重厚な響きを『おーすげーすげー』と楽しむ分には向いている」と書いたのは、実はこの箇所を聴いた時の印象である。「晴れ上がり」前の宇宙はまだ混沌状態なのだから、NDR盤のようなスッキリした響きよりも、このようなドロドロ感タップリの混濁した響きの方が相応しいのかもしれない。あと第2楽章は凄味があって悪くなかった。上記メールの「何かヨロヨロしているような演奏」の最も顕著な例は第1楽章15分39秒〜16分52秒までの「遅い部分」であるが、同様に感じた箇所は他にも数え切れないほどある。(NHKテレビで放映された来日公演ほどではないが。)
 この1998年ベルリン芸術週間における2日間(9月18&20日)の演奏のうち、20日の分がNHK-BSで生中継および再放送されたらしいが(当時自宅には衛星放送の受信装置がなく見られなかった)、ネット上でそれを観た人の印象を読んだ限りではさほど悪くない。(ただし、9番の目次ページでも触れた「某M氏」は違う。数々のアホ投稿で一時期有名になった人物であるが、一般人だからあんな風でもまあ許されるのかもしれない。民族差別発言を除けば。たぶん他所にも書いていると思うが、そしてこれはKさんの受け売りなのだが、あのような発言を載せ続け、投稿者に注意1つもしないサイト管理者の見識が疑われても仕方あるまい。)一方、巨大ネット掲示板のヴァントのスレッドによると、これらの演奏を生で聴いたらしき人々の間にも「絶対CD化は無理だと思ったほどボロボロ」から「(同じ年に)ミュンヘン、ハンブルク、ベルリンの9番を聴いたがベルリンが最高」まで、まさに正反対といってよいほどの意見の食い違いがあり、私も混乱してしまった。もしかしたら日によって出来が全然違っていたのかもしれない。(NHKが放映したのは当たりで許が現地で聴いたのはハズレの方だったのか?)
 いずれにせよ、私が手にすることになったこのCDの音はお世辞にも良いとはいえない。ヴァントの6番のページでは、95年盤の音質の悪さに不満をぶちまけているが、ベルリン・フィルとの録音についても似たり寄ったりで、このディスクや翌99年の7番の印象も「冴えんなあ」である。(私にはよく解らないのだが、先述したヴァントのスレッドでは、録音の悪さというより過度の修正の方が問題視されていた。)ならば5番(96年)と4番(98年)もということになるが、演奏があまりにも素晴らしかったので音質に対して不満を感じることはなかった。しかし、じっくり聴いてみるとやはりそんなにいい録音とは思えない。やっと満足できるレベルになった(復帰した)と実感できたのは8番(01年)であるが、残念なことにそれが最後になってしまった。
 戻って、この時の演奏については、出来の良かった方の無修正音源がいつか発掘される日を待ちわびている今日この頃である・・・・じゃなかった。私は「リアル・ライヴ」は封印しているので、新マスタリングによってライヴの熱気もちゃんと感じられるような再発盤を出してくれとBMGに言いたい。

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