交響曲第8番ハ短調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団
00/07/09
DENON TDBA-98075〜82(DVDボックス)

 既に猿棚盤ページに記したように、あれと同一演奏が遂に正規発売されると思い小躍りしたものの後に別物と知ってガッカリしたという曰く因縁付きの品である。が、先入観をなるべく排して試聴に臨むことにした。
 で聴き終わってみると、これといった難点は聴き出すことのできない秀演と判った。(細かなミスはあったが一発録りのようなのでここでは問わない。)が、2000年MPO盤や翌年のBPO正規盤と比較しても特に優れている点は認められなかった。そして、2ヶ月前の青裏より印象は明らかに劣った。どうもあちらは録音条件の悪さが却ってプラスに作用していたようである。(ノイズは明らかにマイナスだが・・・・)音が割れる寸前、というより大音量時には割れてしまうほどレンジを広く取っているお陰で尋常ならざる壮絶感が伝わってくるのである。中でも第1楽章終盤のカタストロフはまさに「この世の終わり」が現前したかのようであった。残念ながら当盤ではそういうことは起こらない。最晩年の「まったりヴァント」の芸風こそ十二分に堪能できるけれどもプラスアルファは入っていない。(終演後の聴衆の熱狂にもかなりの温度差を感じたが、それを尺度として演奏を論じるのはさすがに本末転倒だろう。)破綻なく収めることを使命としたであろうエンジニアを責めるのは酷に違いないが、音が遠くに引っ込んでしまっているように聞こえるのは何としても痛い。隔靴掻痒(←U氏のパクリ)の思いは6番以上に強かった。

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