交響曲第6番イ長調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団(96)
96/07/07
DENON TDBA-98075〜82(DVDボックス)

 前年録音されたCD(BVCC-733)は確かに緻密だけれども窮屈さは否めず、結局は退屈な演奏に終わっていた(←それは多分に曲のせいではあるのだが)だけに大して期待していなかった。だが・・・・
 第1楽章冒頭の「チャッチャチャチャチャ」にゆとりが感じられる。折り目正しく進んでいくという点では何ら変わりはないのだが、これだけでも受ける印象はかなり違う。豪快そのものの主題提示には胸がすく思いだ。(おそらくティンパニの自己主張が明瞭に聴き取れるためである。とくに第1楽章再現部や第4楽章ラストにおける乱暴狼藉は「アッパレ」の一言である。)この時点で95年盤を断然上回る出来と確信したが、果たしてその通りだった。これなら1分46秒でホルンがずっこけているくらい許してしまおうという気にもなる。(が、ヴァントが存命中だったら修正なしにリリースされることは絶対なかっただろう。)さすがに楽章終了直後のアホ聴衆約1名による拍手は許し難いが・・・・
 これで88年盤のような鋭さも感じられたら言うことなしだった。許光俊(5番ブックレット執筆者)はリューベックの新しいホール(コングスハレ)について「響きは鮮明で、妙なくせがない。まさにヴァントが作り出す精密な音響の交錯を味わうには最高の舞台なのだ。」と書いているが、再生装置を通した音はイマイチ抜けが悪いと聞こえ、「痒いところに手が届かない」的なもどかしさを感じてしまうのも事実なのだ。

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