交響曲第6番イ長調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団
88/12/04〜05
RCA 60061-2-RC

交響曲第6番イ長調
ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団
95/05/15
BMG (RCA) BVCC-733

 「同じ北ドイツ放送響を指揮した一九八八年のCDも買ってお比べなさい」 (許光俊「クラシック批評という運命」)ということなので、ここでも並べてみた。「第2楽章と第4楽章を聴き比べて何も感じない人には、恥じ入ってもらってもよいでしょう。」 ハイ、恥じ入らせていただきます。95年新盤解説執筆者の宇野功芳も「88年盤は過渡期の演奏だけに、最も訴える力のないものになってしまった。」と書いていたが、私にはそうは感じられなかったのである。ちなみに新旧両演奏の収められた選集は現役盤であるが、88年旧盤は廃盤で単品では入手しづらいと思う。(ネットオークションで入手を図ったがいつも高騰するので落札は諦めていた。2004年にamazon.comでようやく中古を手に入れたのだが、2000円以上かかってしまった。5USドル強の送料が痛い。ところがその直後、この旧録音の、しかも国内盤が出品価格1200円そのままで落ちてしまったのにはガックリ来た。こういうことがホントよくある。同じ品を2度買ってしまうよりはマシだが。これも何度かある。)
 新盤ブックレットの解説には「第1主題のフォルティッシモの提示はものすごい巨大さだ。(中略)こんな巨大さは以前のヴァントには絶対になかった」とあるが、それは聴くときのボリュームではないのか? どちらも音量を上げたら彼が言うほどの違いは感じられないように思う。(宇野の試聴時の音量設定についてはティントナーの項で述べるかも。)どちらかといえば、音にメリハリがある旧盤の方がヴァントらしい鋭さが感じ取れるので私は好きである。 とはいえ、第2楽章や他楽章でも遅い部分では新盤はかなり丁寧にやっているなあという印象はある。何度も聴き比べれば良さが解ってくるのかもしれない。ただし、6番を続けて聴くというのは私にとって苦痛である。
 この時期のヴァントのディスクに共通する特徴であるが、新盤は異様なほど音のレベルが低い(Waveradioで通常は70で聴いているのに80まで上げている)だけでなく抜けもが良くない。「この時期」と書いたが、具体的にはこの6番新盤(95年)、ブラームスの新全集(95〜97年)である。93年のブルックナー8&9番以降、急に音が悪くなったように思えてならない。(こんなふうに気になり出すと90年代初めの録音も決して良いとは思えなくなってしまったのだが、少なくとも中頃よりはましである。)ネット掲示板にて、ヴァント&北ドイツ放送響のライヴ録音について議論になったことがある。私が述べたような「音が良くない」という意見に対し「よく録れている」という反論があった。どこが「よく」なのか説明を聞いてみると、本拠地のムジークハレ(ハンブルク)が録音にはあまり向いていないホールなので、その「録りにくさ」がよく(正確に)録れているということらしい。私はこれは詭弁だと思った。(業界人の発言なら「サギじゃないか」と言いたいぐらいだ。)もし「ホールが良くないから」を理由に音質が悪いディスクを平然と売っているとしたら努力不足も甚だしいと言わざるを得ない。悪条件なりにベストを尽くすのがプロなのだから。などと思っていたのだが、「ラスト・レコーディング」のディスク2のインタビューの継ぎ目に収録されている新録6番の抜粋(トラック11)では音が改善している、という投稿があったので聴いてみたら確かにそうだった。わずか20秒ほどであるが特に中音域が豊かになっているのはハッキリ解る。(既発盤は生々しさが感じられず、とてもライヴとは思えない。「デッド録音」とでも呼びたいくらいだ。)このマスタリングで早く再発してもらいたい。既発盤は不良品だったということでリコール対象にしてくれたら最高なのだが、さすがにやらんだろうな。

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