交響曲第5番変ロ長調
ギュンター・ヴァント指揮バイエルン放送交響楽団
82/01/07
Re! Discover RED-26

(Berky氏のサイトには "Gives incorrect date of 1983" とある。)
 8番ベルリン放送響盤のページ下で触れた青裏2枚組HAL-17/18(Halloo)を数ヶ月前からヤフオクで目にするようになってはいるものの、私が出してもいいと思っている額をはるかに上回っているため「値下げ再出品されるまで無視」の方針を貫いていた。そんなある日、同一演奏の5番を収めた当盤を無競争で落札した。(ちなみにMade in U.S.A.のはずなのにケース裏に "GワNTER WAND" と印字されているのは笑える。)残りのベルリン・ドイツ響との9番(93年録音)は続き番号(RED-27)の出品を気長に待つ。
 剛直なケルン放送響盤(74年)としなやかな北ドイツ放送響盤(89年)の間に位置する演奏である。それらとの年月がかなり隔たっているから本来なら予想が付きにくいところであるが、当盤の2年後に同じくバイエルン放送響との共演で8番を残していたのは誠に幸いであった。第1楽章序奏でのブラスの炸裂は、まさに「バリバリヴァント」(某掲示板)全開であった。それもケルン盤のような「金切り」(精一杯)ではないから決して喧しくならない。弦や木管の音色にも艶がある。オケの響きや技量に文句を付けるところは聞き出せなかった。それら以上に印象に残ったのが鯱張ったリズム。とにかくキッチリしすぎるほどキッチリしており、少し速い部分はまるで軍隊行進曲のようだ。第1楽章の約12分半からの1分弱などはそれが顕著で、ちょっと前にテレビで観たどっかの国のパレードを思い浮かべてしまった。まさか「周りが何と言おうが私は自分の信じる道を突き進む」との決意を表明していた訳でもないだろうが・・・・そういえば「クラシックB級グルメ読本」に宮岡博英が「確信が単に確信で終わっており、結構窮屈なところが多い」と書いていたことがピッタリ当てはまるような気もする。ただし(8番「鐘」盤では少々首を傾げないでもなかったが)、この5番ではこういうスタイルも十二分にアリではないかと思う。傷といえるものは会場ノイズぐらいで演奏自体に全く綻びはなく、聴後の満足度はウルトラE級であった。
 さて、そうなると困ったのが当盤のランク付け。完成度は間違いなくカラヤンの80年ライヴより上である。テープヒスは微少で転写は起こっていないから、音質も同等以上といえる。かといって、これをヴァントの後年の録音数種より優れているともいえない。やはり無理をすれば遠からず歪みが生じるという見本である。これで混沌状態への再突入は決定的となった。

おまけ
 ヴァントによる同曲録音としては他にも86年8月および90年9月のBBC響との共演(プロムス?)が残されているようだが、今のところは「まあいいや」という気分である。(89年1月の9番も同様。何となくながら詰めが甘そうだから。)一方、89年10月のシカゴ響との5番ライヴは少し気になっている。まだ増えるの?

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