交響曲第9番ニ短調
ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
53/12/27
Archipel ARCD 0144

 タワーレコードによる「名盤復刻シリーズ」企画の一環として最近(2005年12月)初CD化されたラインスドルフの4番およびスタインバーグの6番を買おうと思ったのだが、それらだけでは送料無料ライン(2500円)に達しなかったので急遽加えた1枚である。(ちなみに今月上旬に「塔」の通販サイトが「システム障害」を理由に休止されたが、12月24日時点でも未だ復旧していない。一時は注文品がこのまま届かないのではないかと思った。)とはいえ、単なる帳尻あわせではなく併録の「ヴェーゼンドンク歌曲集」が聴きたかったこともある。(やっぱり「ワーグナーの『ヴェーゼンドンク歌曲集』」はヘンだなぁ。)全曲通しでは持っていない曲だったし、ソリストのフラグスタートといえばフルトヴェングラーとの数々の共演で知られる大歌手ながら一度も聴いたことがなかったからである。いざ再生してみたところ、これまで聴いたことがある(ゆえに予想していた)オーケストラ版ではなくピアノ伴奏版だったので意表を突かれたが、ピアニストとしてのワルターの演奏(珍しい?)が手に入ったので満足した。(ついでながら、フルヴェンがピアノを弾いたCDとしてシュワルツコップの「ヴォルフ・リサイタル」を持っている。)ソプラノの力強い歌唱については言わずもがなである。
 さて肝心のブルックナーだが、トータルタイム50分24秒は46年盤の52分47秒(ただしピッチ修正を施してあるので詳細は当該盤ページを参照)をも凌ぎ、ブル9最短ディスクの1つに数えられる。とはいえロスタイム(46年盤における演奏前後のアナウンスおよび終演後拍手)を考慮すれば両盤の正味の演奏時間には大きな違いはない。解釈についても然りであった。第1楽章冒頭の無愛想(ブツ切り)ラッパのようなフレージング、加減速の位置、改訂版由来のティンパニ付加(ビッグバンやコーダ等で聞かれる)等々。一方、音質は後の録音だから当然だが当盤の方が圧倒的に良い。音の深さや鮮明さがまるで違う。テープ損傷による音の歪み、ピッチや音量の変動が少なからず存在するため、特にヘッドホンで聴く場合には気になるが、モノラル録音としての水準はクリアしている。旧盤はノイズまみれだし折角の日本語解説もお粗末極まりないものだから、敢えて高価な国内盤(ケンレコード)を選ぶ理由はほとんどないといえる。「ほとんど」と書いたのは、あちらのカップリング曲(レオノーレ序曲第2番)目当ての人、およびフルヴェンの戦前録音のようなデット音質にも「やっぱりモノラル録音はこうでなくっちゃ」と魅力を感じる人のことを念頭に置いたからである。私自身、壮絶な演奏には劣悪音質こそがお似合いという気がしないでもない。

おまけ
 当盤ブックレット記載の録音年月日(February 7, 1953)に関し、通販サイト2社は「ヨーロッパでは2月7日として広く親しまれているためこのような表記になっています」という代理店のコメントを紹介している。(うち1社は「日付が本体で2月7日と誤記されているが」と述べつつ、正しいはずの日付をも「12月7日」と誤記している。ご愛敬か?) 要は「ハイドンのセレナード」や「モーツァルトの子守歌」みたいなもんだな。

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