交響曲第5番変ロ長調
ゲオルク・ティントナー指揮ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団
96/04/19〜20
Naxos 8.553452

 トータル76分46秒の堂々とした演奏である。が、この曲ではどうしてもオケのひ弱さが気になってしまう。この程度の馬力しかないのであれば、インバルやギーレン、スウィトナーやレーグナーなどと放送オーケストラの演奏のように、快速テンポでこぢんまりとしたスタイルにした方が良かったのではないか?
 第1楽章の冒頭部分から感じられた響きの薄さのため、このように書き出したが、それが誤りであることに気が付いた。13分54秒から次第に盛り上げていって14分23秒で到達するクライマックスは凄まじい。ティントナーはここにピークを持っていくことを視野に入れ、冒頭は敢えて抑えていたのである。7番ページでも触れたが、このような音楽づくりは「ハース版的」だと思う。(5番は実質的にノヴァーク版と同じだが。)この楽章のコーダもバカでかい音で鳴らしたりしないが、彼の頭の中ではちゃんと辻褄が合っているのだろう。全曲の中では2楽章がとりわけ美しいと思った。透明感のある録音も素晴らしい。
 とはいったものの、(特にテンポが速い部分で)モタモタするところが何ヶ所かあるし、終楽章のコーダはやはりもうちょっと迫力がほしいなぁと不満に思ってしまった。あるいは、この曲にも長大な「初稿」が存在していれば、それを使って8番に匹敵するような立派な2枚組を作ってくれたのではないか、などと一瞬想像したが、全く無意味である。

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