交響曲第8番ハ短調
オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン
86/09/09
WEITBLICK SSS00034-2

 このライヴによるブル8(2枚組)の存在は2003年8月の発売前から知っていたが、コストパフォーマンス的にはイマイチと思われた(具体的にはカップリングされたR・シュトラウスの管弦楽曲3曲とモーツァルトの「プラハ」に魅力を感じなかった)ため、手は出さなかった。ところが、最近(2008年)になって、なぜかヤフーオークションにて立て続けに出品されているのを目にするようになった。(ネット通販の売価は相変わらずだが、在庫一掃セールとしてどこかの店頭で投げ売りでもされたのだろうか?)うち1点に値頃感があったため、試しに入札してみたら2000円ちょっとで落ちた。
 ただし誤算があった。同一指揮者&オケの演奏ながら時期は少し(1年以上)隔たっているだろうと思い込んでいたのだが、届いた品のケース裏には上記の録音年月日が記載されている。ならば1986年8月22〜29日(註)に行われたDeutsche Schallplattenへのスタジオ録音から1ヶ月も経たない内に演奏されたということだ。(註:Berky氏のディスコグラフィでは86年12月および87年1月となっている。後発のディスクでは改められたのだろうか? どっちにしても時期が近いことは一緒だが・・・・)正味の演奏時間も大差はない。指揮ぶりからも大してやる気の感じられない指揮者ゆえ(失礼)、ライヴでも特に燃え上がったりすることもないだろう。そう考えた私はちょっとガッカリした。
 しかしながら、またしても誤算。もっとも今度は嬉しい方で。シャルプラッテン盤のページには「オーソドックスすぎて書くことが思い浮かばない」などと書いたけれども、実際には少々面白みに欠けると思わないでもなかった。一方、当盤では退屈するようなことは全くなかった。ここぞという所での燃焼度が断然上回っているためだが、どうやら大部分は音質差に起因しているようだ。当盤は鮮明そのもので臨場感抜群。紛れもない超優秀録音である。(スタジオ盤も決して悪くはなかったが、遠くで音が鳴っている感じがする。)また解釈はほとんど同じであるものの、所々でスタジオ盤よりも大胆な表情づけが確認できた。とくにスローな部分で思い入れタップリの演奏が聴けるのは嬉しい。その典型例がアダージョのクライマックス(シンバルが2度目に鳴った後)である。他には第1楽章の名残惜しそうな締め方など。(これがスタジオ盤ではいかにもアッサリ、というより投げ遣り気味と聞こえる。そっちの方がスウィトナーの風貌通りといえるのかもしれないが・・・・またしても失礼。)終楽章の「死の行進」で駆け足となり、威風堂々スタイルを崩してしまっているのが唯一惜しいといえば惜しいか。
 1日収録のためかソロ楽器の合わせが甘いと聞いた箇所もあったが、そのマイナスは微々たるもの。ライヴながらFAB(Flying Aho Bravo)なしというのもポイントが高い。ということで、当盤があれば敢えてスタジオ盤を求める必要はないといって差し支えない。もちろん激安なら話は別だが、"Deutsche Schallplatten 25th Anniversary" シリーズの廉価盤は新品ではもう手に入らないだろう。

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