交響曲第7番ホ長調
オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン
89/01/23〜27
Deutsche Schallplatten TKCC-15014

 解説は私が所有するスウィトナーのブルックナー4種の内でもっとも質が低い。(宇野の8番解説は納得できないところはあっても、たいへんな力作であることは認めている。)お座なりの曲目解説に続いて指揮者についてコメントしているが、そこも当たり障りのないことしか書いていないので、結局ほとんど何も言っていないのと同じである。(しかも脱字のおまけ付きである。)とはいえ、さすがに執筆者もテンポの動きには気が付いていたようで、そこはちゃんと言及している。(ただし、その後の展開はハテナだらけ。)確かにテンポは揺れ動く。ただし、あざとくは聞こえない。恣意的にテンポを動かしているからではなく、目次ページで述べたようにぶっきらぼうに振っているからではないかと私は考えた。(解説者の「デリケートに」には反対だ。)それで何となく「自然体」と聞こえてしまうのは、いつもながら美しいオーケストラの音色と教会の響きのいずれか、あるいは両方の効果かもしれないが、とにかく角が丸いと感じる音質も貢献しているように思う。これがレーグナー盤のような鋭い音質だったら、印象はかなり悪くなっていたはずだ。
 第1楽章コーダが少し早足に聞こえてしまう。が、よく考えたらその直前の嵐の情景が遅いためそう感じるだけであって、トラックタイムは19分を切っているから主部の基本テンポは速く、それと対応させていることが判った。このコーダの追い込みの激しさはヴァントNDR盤に匹敵するが、響きの厚さで上回っている分、当盤に軍配を上げたくなった。最後の5秒で再加速しなかったらベスト演奏だったのに。同じ東独のレーグナー盤とは異なりアダージョで打楽器が入るが、前述したテンポ揺さぶりによってそれなりに劇性を備えた当盤の演奏には相応しいと思う。ただし、この第2楽章でもなぜかクライマックス以降が速くなってしまう。「ひと仕事終えたのでサッサと帰ってビールでも飲もう」みたいである。ということで、「いい演奏なんだけど、ちょっと詰めが甘いかな」と思ってしまった。ムキになって演奏するような曲ではないと指揮者は考えていたのかもしれない。こちらも聞き耳を立てたりしなければ大丈夫である。後半楽章は特に減点するところなし。

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