交響曲第6番イ長調
ウィリアム・スタインバーグ指揮ボストン交響楽団
70(69/11?)
BMG (TOWER RECORDS) TWCL-3004

 購入動機はラインスドルフの4番と同じ。指揮者について何の知識も持ち合わせていないことも同様。フォルティシモで音が割れ気味なのも一緒である。ただし当盤ではトランペットがちゃんと聞こえる。やはりあちらは録音に何か不手際があったのだ。第1楽章3分16秒のクラリネットがやたら耳につくなど当盤では木管がやや強調されている感があるものの、鑑賞に差し支えは全くない。ついでながら、テンシュテットがボストン響を振った48番の海賊盤が以前から気になっているのだが、これぐらいのクオリティがあれば大丈夫と胸をなで下ろした。ラインスドルフ盤から抱いたオケに対する不安感と不信感が一掃されたから。
 当盤はなかなかに優れた演奏である。トータル52分という短時間ながら聴き応えは十分ある。つまりクレンペラーと同じくテンポの変化を上手く使うなどして要所を際立たせるという省エネ演奏である。第1楽章11分台や終楽章4分台の盛り上がりを聴けば判るようにアンサンブルはそんなにキチッとしていないのだが、ノビノビ演奏しているのが何よりも良い。開放的な響きも速めのテンポと合っている。アダージョも変に深刻ぶったりせず飄々と演奏しているのに好感が持てた。スケルツォにしても勢いはあるがショルティやエッシェンバッハのようなドンチャン騒ぎにはしない。それでも愉しませてくれる。こういう6番のディスクはそう多くない。「ボストン響のあたたかいサウンドを生かしながら、真摯で衒いのない音楽作りによって、素朴で自然なブルックナーの音楽を見事に表現している」という解説(塚田奈緒執筆)にも納得がゆく出来映えである。(ただし「あたたかい」というよりは「シブい」がピッタリの響きであるから、シュタイン&バンベルク響の演奏と言って聞かされたら信じてしまうかもしれない。)
 ということで、当盤については帯およびブックレットにも特にイチャモンを付けるところは見当たらなかった。ただし、(LPの)発売当初は今ほどブルックナー人気がなかったために「知る人ぞ知る名盤」となっていたということだが、私のようなブルヲタが増殖した今となっても状況はあまり変わっていないように思われるし、将来も「玄人好み」「一部好事家向け」という地位に留まり続けるような気がする。終楽章ラストのようなケレンをもっと多用していれば違っていたかもしれないが・・・・・・・

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