交響曲第9番ニ短調
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ミネソタ管弦楽団
96/11/18
Reference Recordings RR81CD

 NFL2007/08シーズンも大いに楽しませてもらっている。例年通り圧倒的な強さを見せつけているコルツあるいはペイトリオッツによるパーフェクト・シーズン(註)成るかも気になり始めたところである。(註:既にスーパーボウルまで無敗という文字通りの「完全」をドルフィンズが1972/73に成し遂げている。ただし、当時レギュラー・シーズンの試合数は現在より少ない14だった。16勝0敗はまだ一度も達成されていない。)だが、惜しいことにウィーク9の直接対決で少なくとも一方の目は消える。(→追記:NEが第4Qに10点差をひっくり返し全勝を守った。それにしても素晴らしい&レベルの高い試合だったなぁ。)それ以上に昨年のプレーオフでQBロモの信じられないような大チョンボにより敗退してしまったカウボーイズが雪辱(少なくともSB出場)を果たすことができるかに私は注目している。(元は嫌いなチームの1つだったのだが。)第5週のビルズ戦でも(何とかかんとか勝ちを拾ったものの)とんでもないゲームをやらかしてくれた。(現地のアナウンサーが「フットボールを何十年も実況してきた私ですが、こんな試合は初めてです」と語っていた。)とにかく目の離せないチームだ。さて、ミネソタといえば長らく低迷の続くバイキングスの本拠地である・・・・・みたいな無関係マクラは止めておく。(2008年1月追記:やっぱり書き加えたくなった。バイキングスは最優秀新人攻撃選手にも選ばれたRBピーターソンの活躍もあり、8勝8敗と躍進した。来期はプレーオフ出場も十分期待できるだろう。それはさておき、ペイトリオッツはとうとうやっちまいやがった! ブレイディの50TDパス&モスの23レシーブという新記録まで樹立するとはアッパレの一言である。その勢いのまま無敗で今シーズンを終えるのだろうか? ついでながら、ドルフィンズには是非とも「逆パーフェクト」を達成してほしかった。両方で歴史に名を残すことができたのに・・・・って無責任か。→同年2月追記というか完結編:ダラスはプレーオフ初戦でアッサリ散ってしまったが完全な自滅である。あれだけ凡ミスと不用意な反則を繰り返していては勝てる試合も勝てない。それにしても米国内のみならず世界中のNFLファンが期待していたパーフェクトシーズンを阻んでしまうとは・・・・・「まさにKYジャイアンツ」と言いたくなる。とはいえ、再逆転のドライブは本当に素晴らしかったし神懸かっているようにも思えた。「勝利の女神もあまりの一人勝ちは望んでいないんじゃないか」と一瞬そんなことまで考えてしまった。→2009年1月追記:最後までもつれにもつれはしたが、予想通りバイキングスは翌08/09シーズンにカンファレンス制覇&プレーオフ出場を果たした。カウボーイズはまさかの失速。そしてドルフィンズはワイルドキャット・フォーメーションの採用も功を奏して見事な復活を遂げたけれど、代わってライオンズがとうとうやっちまいやがった! 自動車不況の真っ直中にあるデトロイトの住民にとっては泣き面に蜂もいいところだろう。)
 ザールブリュッケン放送響盤のページ追記に「絶対買わん」などと書いていたにもかかわらず、入手する羽目に陥ってしまった。ヤフオクに980円で出品されていた当盤に出来心でちょっかいを出したら(1020円に高値更新したら)そのまま終了してしまったという次第。秋口からコレクションの増加速度が上がり始め、常に執筆ノルマを抱えている状態なので競争相手に「ちっとは根性見せろよ」とつい八つ当たりしたくなった。
 ところで、既にデルフスのページでiTunes Storeにおける当盤のケッタイなトラック分割について言及しているが、届いたCDでもそうなっているのを知って愕然とした。すなわち第1楽章が1〜7、第2楽章が8〜10、第3楽章が11〜17である。何でこんなアホなことをしたのか? 頭出しが面倒で仕方がない。これがポピュラー音楽のディスクだったら少なくとも10点は引いているところだ。が、気を取り直して試聴に臨む。
 後で再度触れるかもしれないが、とにかく音質はメチャメチャに良い。特にクリアーさは比類なし。「響きは無機的」などとケチを付ける人もきっといるだろうが、9番の演奏はカラッとしていればいるほど良いと考えている私は全然オッケーである(ショルティ盤評なども参照のこと)。
 5年後のザールブリュッケン盤とは解釈が異なっていると聞いたところは複数あるが、その最初はビッグバンへの入りが随分とアッサリしている点であった。(一方、再録では直前で明らかに歩を緩めている。加速するのは言語道断としても、私はできることなら減速も控えてもらいたいと願っている。その点でヴァントのやり方は理想的だ。ところが、少し前に某掲示板のブル9スレで目にしたところによれば、第一主題の前のリタルダンド指示は楽譜にしっかり書かれているらしい。それもアホ弟子の改竄ではなく作曲者自身によって。これには驚いた。「あそこは絶対テンポキープしたまま飛び込むべきだと思ってたんだが。ショックなんで寝るわ」「しかし、音楽を聞くかぎり、ブルックナーが間違っているとしか思えないなあ」のようなレスに激しく同意したい気持ちである。)また、ビッグバン後のスローテンポによる大見得切りもザール盤よりは控え目と感じた。同楽章の終わりに飛ぶと、ザール盤のコーダ直前(トラック1の22分36秒)は交通事故、それも大型車同士の正面衝突事故が発生したかのような凄まじさだったのに対し、当盤でもトラック7の3分27秒(やれやれ)で同様のティンパニによる時間差攻撃は確認できるものの、断裂感というか違和感ははるかに少ない。(ちなみに、鈴木淳史は「クラシックCD名盤バトル」でザール盤を推したついでに当盤にも触れ、「この指揮者のアイディアが生乾きのままに音にされているから、まるで楽屋オチみたいにして楽しめるし」とコメントしていた。私は逆のように思えて仕方ないんだが・・・・とにかく解釈があざといのは圧倒的に新盤の方である。ついでながら、「犬」通販の紹介文にあった「これまでのザールブリュッケン放送響と較べ、ケタ違いにうまいミネソタ管を起用したこともあり、隅から隅まで徹底してスクロヴァ色に染め上げられたさまが見事としか言いようがありません」にも同じく異を唱えたい。そもそも後年の全集録音に対して「これまでの」はないだろう。)
 そんな訳で、当盤では指揮者のこれ見よがしな解釈が(あくまで相対的に、ながら)影を潜めているという印象を受けたのだが、それに代わって耳に付いたのがブラスの鳴りっぷりの良さである。先述の優秀録音のお陰だけではない。どうやら全奏でもティンパニを意図的に抑えることによって浮き立たせているようである。この辺りは先日痺れを切らして新品を購入したズヴェーデンの4番から聞かれた「弦へのこだわり」と同じく、ミスターSの金管への偏愛ぶりを反映しているのかもしれない。何にしても、このような木質感の極めて乏しい(というより皆無の)音色は、全てが無機物に返るまでのプロセスを音として表現する場合には最適といえる。(もしかするとHDCD対応プレーヤで再生すれば、ブルックナーの抱いていた宇宙観をまざまざと感じ取ることができるのだろうか? などと少しは気になるけれど、今のところ新装置購入の予定はない。)ここで再び第1楽章の最後を飾るトラック7であるが、迫力十分&揃い抜群の金管合奏にはこちらも胸がすく思いだった。最後の最後も例の「ララー」音型の繰り返しがハッキリ聞こえ申し分なし。と、ここまでは一応褒めたけれど次から文句を並べる。
 トラック4の0分39秒、つまり第1主題が再現する直前のイラチ加速で嫌な予感がしたのだが、同5で突如ノロノロになるため聴き手に少なからぬ脱力感、というよりダメージを与える。0分32秒からまた速足、以後もテンポいじりを連発。つまり第1楽章で「まとも」だったのは実は両端だけで、あとは結局のところ再録のような「迷大工」ぶりを発揮していたということである。(どうでもいい話だが、最初に変換された「名大工」という文字列は全く別の読み方と解釈が可能であると気が付いた。)  第2楽章以降も印象は基本的に同じ(解釈にはクエスチョン、そして音色には二重丸)なので省略することとしたが、これも偏に細切れトラックが災いして特定箇所のピックアップが困難なためである(と責任転嫁して逃げる。)なお、終楽章のトラックタイムが第1楽章より不当に長いというバランス欠如は、ザール盤にぬかりなく引き継がれているばかりか、約3分半から約4分20秒へと拡大している。

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