交響曲第7番ホ長調
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団
91/09/27〜29
BMG (Arte Nova) BVCY-38033〜44 (全集)

 平林直哉が「クラシック名盤&裏名盤リスト」で「掘り出し物」として褒めているのが当盤である。前半2楽章がやや遅め、後半2楽章がやや速めだが、バランスが崩れていると感じされるようなこともない。3番のようにテンポに疑問を感じさせることもない。6番や9番のように不自然と感じられるような奇抜な解釈に驚かされることもない。4番から予想していたような改訂版採用(フライング・ホルン)もやってない。と、私の書いていることは「ないないずくし」だが、不足しているところのない名演である。
 おそらくこの指揮者のことだから、無策どころかいろいろ考えて指揮しているのだろうと想像するが、それが結果としては「自然体の演奏」に感じるのだから、よほど細かい配慮をしているのだろう。(「劇性」が持ち味のヨッフムも7番はなぜか「自然体」に聞こえたが、この曲には何らかの緩衝作用があるのかもしれない。)特に感心したのが第2楽章。24分台ではメリハリをつけないとダレる危険があり、所々でを速くして弛緩を避けようとする指揮者も一部にいるのだが、スクロヴァチェフスキはそういう「逃げ」を打たずに最後まで聞かせてしまうのだから大したものである。クライマックスには打楽器が入るが、ティンパニの最後の一音を強打させないのと、だんだん音をしぼって最後の一節(19分50秒〜)は聞こえるか聞こえないかにまで抑えることにより、ノヴァーク版使用にもかかわらず騒がしくならないよう工夫をしている。まるでノヴァーク版からハース版に移行したかのような錯覚を起こしてしまった。「オーケストラをきちんと制御し、流麗かつ透明な音世界を描く」「常に潤いを失わないところがいい」という平林の評価にも肯かされる。

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