交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ハレ管弦楽団
録音年月日不明(92年頃?)
CARLTON Classics CXCO-1082

 ザールブリュッケン放送響との全集(Arte Nova)のブックレットによると、スクロヴァチェフスキは当初ハレ管とブル全集を録音するはずだったが、RCAの組織改編により第1弾の4番のみでプロジェクトは挫折したとのことである。先述の解説には「1993年にイギリスのIMPから発売された(PCD1059)」とある。その初発盤には録音年のクレジットはないらしいが、おそらく発売の前年あたりだろう。当盤は同一音源の再発盤である。
 第1楽章冒頭から緻密なアンサンブルに舌を巻く。お得意の対旋律強調(終楽章冒頭の爆発前が最も顕著)はあっても癇に障るほどあざとくはない。改訂版由来の打楽器付加もカラヤンのようにこれ見よがしではないのは好感が持てる。そういえば、許光俊は「クラシックB級読本」の序「クラシックB級批評宣言」にて、「7.ギチギチの合奏にエクスタシー!」では「スクロヴァチェフスキーに耳をそばだてろ。大した解釈でなくても、合奏は極端にいいと、満足度は高い。」と述べていたが、その典型のような演奏である。(ついでながら巻末の「参照CD」にて、鈴木淳史はスクロヴァの「ロメジュリ」とブル5を挙げている。)昨年入手したザンデルリンク正規盤のように、私は大らかさもある程度は感じられる演奏を好むようになっているが、確かにこういうのも決して悪くない。
 ザールも決して下手なオーケストラではないが完成度は当盤の方が上である。(録り直し放題の可能だったスタジオ録音ということもあるだろうが。)両盤とも終楽章が22分超というゆったりテンポ(ちなみに第2、第3楽章もそれぞれ16分台、12分台で同じ)であるから、それとバランスが良いのは約20分の当盤よりも約21分のザール盤であると考えられなくもないが、楽章単位で比較すれば当盤の方が圧倒的に充実していると思った。少々こもり気味の新録音に対し、明晰そのものの音質と緻密演奏との相性が抜群に良いということだけでは片が付かないように思う。今回の評執筆に際してザール盤を改めて試聴して気付いたことがある。じっくり耳を傾けると時に(テンポの変わり目で)もたついているように聞こえたのだ。それが顕著なのが終楽章のエンディングで、21分38秒などはテープを継いでいるのではないかと思ったほどである。その後も同じことが繰り返されたため、どうやら指揮者の解釈と思われるが・・・・これはマイナスである。とにかく今回の野次馬入札(800円)は成功だったといえるだろう。

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