交響曲第5番変ロ長調
ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデン
99/03
Deutsche Grammophon 289 469 527-2

 鈴木淳史が「クラシックCD名盤バトル」にて「いや、これがじつに(・∀・)イイ!! んでございますよホンマ」などとして推していたため、amazon.co.jpより当輸入盤を購入。聴いてみたところ確かに(^∇^)イイ!! (当サイト内での顔文字使用はおそらくこのページが最初で最後になるだろう。)こういうことがあるから鈴木は侮れないのである、ホンマに。
 第1楽章2分27秒からの大ファンファーレを聴いて驚いた。当盤はシノーポリのブルックナーとしては4番(87年録音)の次に買ったのであるが、あちらの明朗そのものといった音色とは似ても似つかぬドッシリとした響きだったからである。3分48秒の主題提示も重量感タップリで、まるで11年半の間に全く別のオケに生まれ変わったかのようである。開放的な4番と重層建築のような5番という性格の違いによって響かせ方を変えていた、という訳でもなさそうだ。というのも、改めて4→7→8→9→5番と録音順に聴いたところ、次第に重心が低くなっていると感じられたからである。つまり、焦らずジックリとオケの改造に取り組んでいた訳である。恐るべし!
 ここでまたしても鈴木だが、「クラシック悪魔の辞典【完全版】」のSKDの項は、このように結ばれている。

 渋メの指揮者による渋メの音響が、「地域には、その地域の誇れ
 るオトがあるってもんよ」系コダワリ屋を耽溺させたものの、東
 西統一後は、シノーポリというイロモノを常任に据えたことによ
 り、その役目を無事終了させた。

そりゃ逆じゃないか? (地域性はともかくとして)ヨッフム時代の露出狂みたいな音色がシノーポリの長年の尽力のお陰でまともになったんだから。
 ということで、機動力抜群というこのオケの長所は、それが仇となって時に軽薄さを感じさせることもあったのだが、今やその弱点が完全に払拭され、まさに理想的な響きとなった。(あまり良い形容ではないが、ふと「ベルリン・フィルから重石を1つ除けた感じ」というのを思い付いた。)これで演奏が良ければ文句なしなのだが・・・・・本当に完成度は申し分なしであった。(第1楽章中間部ピークや両端楽章ラストがもっと大音響大会になっていれば、とも思うが、指揮者の芸風を考えたらそれは無理な要求というものであろう。)先の9番まではテンポ設定に首を傾げるところがあった。が、それも完全になくなった。第1楽章10分50秒からの弦と木管の絡みの美しさなど溜息が出てしまう。思うに、シノーポリはマーラーでも楽器のバランスに細心の注意を払っていたのだが、それが作風と相まって(相乗効果で)「やりすぎ」となり、私には神経質と感じられてしまったのだが、ブルックナーでは丁度よい具合に響きが整理されるというプラスの結果だけを生んだということだろうか? (この点では冒頭で触れた「クラシックCD名盤バトル」での鈴木の「まあ、マーラーのときはその狂気をあぶり出していたように、シノーポリはブルックナーではその構造をじわりじわりと浮き上がらせていたってことだ」という分析が実に見事である。そして、私には前者が気に入らなかったということに過ぎないのかもしれない。)あるいは指揮者の円熟ということも十分に考えられる。よってマーラーの(もちろんSDKとの共演による)再録音を聴いて確かめてみたかったところだ。改めて合掌。

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