交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデン
90/04
Deutsche Grammophon 431 684-2

 既に「ブルックナー指揮者」としての実力を認めているシノーポリだけに当盤入手に際して全く不安はなかったが、「試金石」(ギーレン盤ページ参照)ともいえる3番だけにここは襟を正して聴かずばなるまい。
 と心していたのだが、第1楽章冒頭数分の素晴らしさにすっかり気を許してしまった。あざといことは何一つやっていない。同オケによるヨッフム盤と比べたら大人と子供ほど違うとまで言いたくなる。それぐらい当盤は堂々としている。(こうなると彼がマーラーであれほどの乱暴狼藉に走って結局は最低レベルの録音しか残せなかったのが私にはますます謎に思われる。)第1楽章中間部ピークの前後では基本テンポより若干速くなるところがあるものの、イケイケになって暴走したりはしない。あくまで指揮者は冷静であるからテンポ変更は適正範囲を超えていない。なにせオケの音色が明るくて響きは開放的であるから、それで荒々しさは十分に表現できるのである。(またしてもだが、手を変え品を変えて効果を狙った挙げ句、安っぽい興醒め演奏になってしまった「復活」とはまさに対照的だ。)「何をいまさら」と言われそうだが、第2稿では楽章終盤(コーダの前)にも巨大なピークがある。その存在に気付かせてくれたのは実は当盤が初めてだった。それほどまでに18分56秒以降の数秒間は充実している。
 以降も全く隙がないので簡単に記すに留める。アダージョでは静かな部分での弦の掛け合いの美しさがまず印象に残った。空中浮遊のような尻軽テンポを設定して厳粛な雰囲気をぶち壊したりしていないのは予想通りで、一部アホ指揮者とは一線を画していたが、7分10〜17秒を強調していたのは意表を突かれた。スケルツォは派手な音色が見事にはまっていて申し分なし。これだけ盛り上げたのだからコーダはまさに蛇足、6分34秒で「ジャン」と終わっていた方がどれだけスカッとした気分になれただろう。(欲張り過ぎか?)終楽章もあくまで冷静に盛り上げている。終始冷め切っていたギーレン盤も悪くなかったが、やはりここぞというところで熱気が感じられる演奏の方が私は好きだ。ということで、「頭寒足熱型の名演」という自分でもよく解らない賛辞によって当盤評を締め括るとしよう。

3番のページ   シノーポリのページ