交響曲第9番ニ短調
カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
51/11/02
haenssler CLASSIC CD 93.148

 当盤は8番のオマケのつもりだったから最初から期待していなかった。だから、ちっとも気に入らない演奏ではあったが落胆はしなかった。第1楽章1分46秒から加速をかけるところ、2分25秒から響きがグチャグチャになるところ、2分49秒以降のフレージング等々疑問を感じるところは数知れず。だが、全て予測の範囲内であった。ところが、思わず聞き耳を立ててしまったのが「ビッグバン」(2分33秒)でのナヨナヨとした鳴りっぷり。チェリ&SDR盤と非常によく似ている。あちらのディスク評ページでは、溶け合った響きだが全く迫力不足だと酷評したけれども、指揮者のせいではなかったのだな。とにかく気に食わない点としてVPO盤ページにぶちまけたこと(「ダダーン」が全然聞こえない同楽章のコーダ、終楽章冒頭のスタスタその他)をことごとくやってくれているので、当盤については字数を費やすだけ無駄であるようにも思うが、もう少し続ける。
 私が所有するシューリヒトの9番3種中で最も枯れているようにも聴こえるが、それは録音のせいである。騙されてはいけない。(録音年代から見れば当然であるが。ちなみに、同じレーベルの89番より古いだけに音質はそれらより痩せ気味で劣る。またヘッドフォンで聴くと会場ノイズが結構気になる。)1楽章のテンポの揺さぶりはまさに最悪だが、凄まじい暴れっぷりは終楽章にまで及び、「オレはまだ死にたくないんだ〜」と喚き散らしているようにも聴こえる。そして、こちらは「この期に及んでジタバタすんなよ」と言いたくなる。これほどまで現世に執着した9番演奏というのも珍しい。某氏の言葉を借りれば、当盤以上に「世俗的」な演奏を私は他に知らない、ということになるのだろう。(もちろん「世俗的/崇高」なんか所詮は主観に過ぎないから、自分勝手な決め付けで世迷い言をほざくのはアホだとはちゃんと自覚している。そして、当然ながら演奏の良し悪しとは何ら関係がない。さすがに「世俗的」スタイルの9番はマズイという気がしないでもないが、完成度さえ高ければ「異色の演奏」として評価することも可能である。当盤とはかなり毛色は違うがムラヴィンスキー盤のように。)なお、当盤の終楽章コーダはレガートでなくフツーに弾いているが、やっぱりこっちの方が私にはしっくりとくる。

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