交響曲第9番ニ短調
カール・シューリヒト指揮バイエルン放送交響楽団
63/03/08
ORFEO C 548 001 B

 マスタリングのせいもあるだろうが、最初に買ったシューリヒトの9番VPO盤は全く気に入らなかった(当該ページ参照)。それに懲りたので、当盤の発売を知っても全く食指は動かなかった。ところが、名古屋出張時に中古につい手を伸ばしてしまった。「スリキズ試聴済OK」、つまり盤質に難があるゆえの安売り品で、たしか800円(税抜)だったと記憶している。
 私の大嫌いなやり方であるが、第1楽章の「ビッグバン」(2分32秒)への突入など全く凄まじい。私はここを聴いてこの指揮者のやり方がようやくにして解った。腹立たしさを堪えきれないほど乱暴な処理がてんこ盛りという点はVPO盤と大差ないが、特に注目すべきは第1楽章コーダの「ダダーン」が全く聞こえないことである。つまりバカなのはオケではなくて指揮者だったのだ。とはいえ、それを除けばテンポ設定や締め方などは悪くない。彼のスタイルと相性の良い第2楽章の完成度が高いのはVPO盤と同様。終楽章は22分台で、両端楽章のバランスはVPO盤よりはるかに良くなっている。また、速めではあるが単に流しているようには聞こえない。音色が明るめで開放的な響きもそれにはかなり貢献していると思う。
 ということで、繰り返すが、シューリヒトのスタイルが「枯淡」とは対極にある「爆演」(快速テンポによる熱々演奏)であることが解ったという点で当盤を入手した意義はあった。が、どうせならこちらがステレオ録音で残されていれば、と少々残念にも思った。

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